攻略本
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攻略本(こうりゃくぼん)は主にコンピュータゲームの攻略法を取り扱った単行本の総称である。同じような内容を扱っている雑誌類はゲーム雑誌と呼んで区別される。
ギャンブル等を扱った攻略本も存在するが、単純に「攻略本」という分類がなされた場合、それはコンピュータゲーム関連のものを意味するのが通例であるため、本項目でもそれについて述べる。
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[編集] 攻略本の内容
ゲームの進行チャート、ステージやダンジョンの地図、ボスキャラクターとの戦い方、アイテムやキャラクター・モンスターのデータ集などが主な内容である。
攻略とは直接関係のない開発者インタビューや、ゲームに関連したイラスト・漫画・小説などが収録されているケースもあり、これらを目的として購入するファンも多い。このような内容は「公式ガイドブック」(下記参照)を名乗る攻略本に多く見られる。
[編集] 攻略本の歴史
[編集] 1980年代
日本で最初に登場した「ゲームを攻略する書籍」は、1970年代末の『スペースインベーダー』ブーム時に発行されたものだと思われる。しかし特定のゲームのブームに依らない「攻略本」というジャンルを築き上げたのは1980年代のミニコミ文化の功績であろう。
当時高専生だった田尻智が1983年に刊行した『ゲームフリーク』をはじめ、全国で小規模のグループ、時には一個人が攻略情報を独自にまとめ、同人誌として攻略本を発行した。彼らの多くは、後にゲームライターやクリエイターとして巣立っていった。当時の同人攻略本の中でも特に有名なものが、田尻も関わった『ゼビウス 1000万点への解法』だ。ゲームセンターによってコンピュータゲームが一般に身近なものとなり、それが発展・複雑化するに従って、「攻略法」が求められるようになったのである。
商業誌としての攻略本が普及するようになるのはファミリーコンピュータのブームを待たなければならない。数々の商業ゲーム雑誌の創刊に伴って攻略本も多数刊行されるようになった。当時はゲームの内容も薄かったので、1冊で数本をまとめて攻略するケースも多かった。
攻略本の発行部数は、通常はゲームソフトの出荷数より少ないと思われる。加えて当時の攻略本は紙質が劣悪なものが多かった。そのため、この時期の攻略本は現存する数が少なくなっており、中古市場では定価の数倍で取り引きされている。同じ店でゲームソフトは100円程度で叩き売られているにも関わらず、それの攻略本は数千円を下らないといった光景もしばしば見られる。
[編集] 1990年代
ゲーム内容の複雑化や、コンピュータRPG、シミュレーションゲームなどのデータ量の多いジャンルが台頭。それに伴い、攻略本はより必要とされる存在となった。ページ数は増加の一途を辿り、上下巻に分かれて(「マップ編」「データ編」というのが多い)刊行されるものも現れた。攻略本と同じスタイルで、ゲームの「設定資料集」や「ファンブック」が現れたのもこの時期である。
内容だけでなく装丁も次第に豪華になった。かつてはB6程度が主流であったが、次第にB5やA5に取って代わられた。全ページカラーはもはや当たり前であり、紙質も以前のものとは段違いである。当然それらは価格に跳ね返り、1冊1000円以上するものも珍しくはなくなった。
[編集] 2000年代
ゲームの複雑化と肥大化の傾向は留まることを知らない。1社の攻略本が上下巻どころか3~4冊に分割されるケースもよく見られるようになった。また「大作」と呼ばれるゲームの場合、最初に不完全な攻略本を出し(いわゆるゲーム発売と同時に発売される『最速攻略本』もこの類)、後に同じ出版社から「完全版」を出版するといった手法も執られるようになり、一部ユーザーから非難を浴びている。さらに、出版社ごとの攻略本の個性が薄くなったという声も聞かれる。
一方、インターネットの普及に伴い、ゲーム攻略を扱うウェブサイトや電子掲示板(いわゆる「攻略サイト」「攻略掲示板」)が大幅に増えており、それが攻略本の売り上げの低下を招いているという指摘もある。インターネットにおける攻略サイト・掲示板は情報が即座に集積され、誤情報の修正や新情報の追加も容易である。メーカーからの規制も無視でき、攻略本が提供できないデータ解析などの詳細情報にも手を出せるので、制作者の能力次第では一般刊行物とは比べ物にならないほど充実した内容を提供することが可能である。そのうえ、利用者からしてみれば無料で閲覧や印刷が行えるのである。「本」であることをどう活かすのかが、今後の攻略本の課題と言えるだろう。
[編集] 「公式」と「非公式」
かつての攻略本は、制作側が自力で調べたデータを掲載するものであったが、やがてメーカーから提供されたデータをもとに製作するのが常識となっていった。また、スクウェア・エニックスやコーエーのように、メーカー自らが攻略本を出版する場合もある。メーカーから公式に提供された情報によって製作される攻略本は一般に「公式攻略本」「公式ガイドブック」等と呼ばれる。実際にそれを名乗っていなくても、ユーザーからはそのように呼ばれる場合が多い。
提供されたデータと実際にゲーム内に存在するデータに差違がある場合、公式を名乗っていながら堂々とミスを掲載することとなってしまう。顕著な例として初期のポケットモンスターが挙げられる。ゲーム自体の人気から数多の攻略本が出版され、属性相性や技の効果において多数のミスが、全ての攻略本に存在するという酷い様相だった。
このような手法を用いれば、出版側が装丁や構成に時間を割ける半面、提供されていないデータの公開は事実上禁じられているという意味でもある。よって、独自のデータをまとめて、ゲームメーカーに無許可でゲリラ的に販売される攻略本も稀に現れる。このような攻略本は俗に『非公式』と呼ばれる。ゲーム内の写真や公式イラストを使わない配慮はなされるが、裁判沙汰に発展するケースも多い(例:『三國志III』、『ドラゴンクエストVIII』)。
[編集] 有名な非公式攻略本
- 『どらくえ3 謎の魔王をやっつけろ』 (冬樹社)
- 『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』の「ヒ公式」ガイド。同作品では公式ガイドブックやゲーム雑誌において、ストーリー終盤以降、内容だけでなく、その存在すら完全に伏せられている部分があったが、この攻略本ではその伏せられている部分、および最後のボスまでの攻略法が紹介されている。マップやデータ集はほとんど無く、シナリオの進行に沿って筆者が読者に語りかけるようなスタイルが蕩々と続く。挿入されたイラストも鳥山明(シリーズ全般のイラストを担当)とは似ても似つかないリアルタッチであり、攻略要素を抜きにしても一種独特な趣がある。
- 一応、[Yahoo!ブックス]にも基本情報だけは載っている。
- 『ポケモン金銀 完全解析旅日記』 (宙出版)
- 『ポケットモンスター 金・銀』の攻略本。当時非公開であった「幻のポケモン」(ゲーム内に登場せず、キャンペーンでデータ配布される)の発見を売りにしていた。「インターネットで得た情報」とあり、当時のとある解析系サイトを意識していたと思われる。表題の通り日記スタイルであり、要点を押さえた攻略法が述べられている。全ページ3色刷で図や写真は一切使われていない。
[編集] 攻略本のブランド
- スタジオベントスタッフ
- 解体真書
- アルティマニア
[編集] 参考文献
- 『ゲームフリーク 遊びの世界標準を塗り替えるクリエイティブ集団』 ISBN 4840101183
- 『田尻智 ポケモンを創った男』 ISBN 4872338332
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