寄生獣

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寄生獣
ジャンル	人間ドラマ,SF,ホラー
漫画
作者	岩明均
出版社	講談社
掲載誌	OPEN増刊、月刊アフタヌーン
レーベル	アフタヌーンKC
連載期間	OPEN増刊F号 - 月刊アフタヌーン1995年2月号
巻数	全10巻
話数	全64話

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『寄生獣』（きせいじゅう）は、岩明均によるSF漫画作品。OPEN増刊F号から連載が開始され、講談社・月刊アフタヌーンに連載誌を変えてからは1990年1月号から1995年2月号にかけて連載され、作者の代表作となった。

全10巻のコミックが発行され、2004年には完全版全8巻で新しく発売されている。1993年第17回講談社漫画賞一般部門受賞、1996年第27回星雲賞コミック部門受賞。

2006年現在、清水崇監督によるハリウッド実写映画化が予定されている。

注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。

[編集] 概要

グロテスクなスプラッタ的描写が続くため、よくあるモンスターホラーのような印象を受けるが、一人の少年の数奇な運命を通して、生命の本質を峻厳に描きつつ、それ故に見えてくる人間性の尊さと人の浅はかさを訴えた内容は、各方面から注目を浴び絶賛された。

英訳もされているが、左開きの英語版は右開きの日本語版を鏡映しにしただけのため、右手となるべきところが左手になってしまい、「ミギー」も「Lefty」（「左利き」の意として「ヒダリー」）と改められた。また映画ターミネーター2の液状金属の元ネタでもある。^[要出典]

「人はどこから来てどこへ向かうのか? 人類の存在意義は?」等寄生獣のテーマと非常に近い作品として永井豪による『デビルマン』がある。ストーリーの展開が酷似していることは岩明均も認めており、デビルマンアンソロジーコミック『ネオデビルマン』には読み切り作品を寄稿している。

[編集] あらすじ

ある日、空から多数の正体不明の生物が飛来してきた。その生物は人間の脳に寄生し、全身を乗っ取って操作し、頭部を自由自在に変質させて人間を襲い、本能的に捕食するという驚くべき性質を持っていた。見た目は人間そのものであった彼ら「パラサイト」は、人間社会に徐々に紛れ込んでいった。

世界中でミンチ殺人事件が頻発し、メディアが注目し始めた頃、どこにでもいるようなごく平凡な高校生・泉新一は、パラサイトの襲撃を受け、間一髪で脳の乗っ取りは免れるものの、右腕に寄生されてしまう。彼は文字通りの「右腕」となったパラサイト「ミギー」と共に、事件の真実を知る唯一の人間として責任を感じ、パラサイトを倒そうと考える。しかしパラサイトであり、新一と自らの安全を確保する必要があるミギーは、どちらにも与する気はなかった。

そんな中、彼が通う高校に、パラサイトの教師「田宮良子」が赴任してくる。彼女はパラサイトの仲間、「A」と共に、新一を観察すべくやってきたことを話した上で、戦う事はお互いにとって有益でないと判断し、その場は引き下がった。しかし暴走した「A」は学校を襲撃し、新一と対決。苦戦の末「A」を倒した新一だったが、パラサイト同士の「お互いを引き寄せる」力からか、なおも自らの意思に反する戦いを強いられることになるのだった。

[編集] 主要登場人物

泉新一（いずみしんいち）: 本作の主人公。西高に通う高校生であったが、右手に宿ったパラサイト、「ミギー」により数奇な運命に巻き込まれていくことになる。ルポライターの父親と、専業主婦の母親を持ち、兄弟はいない。中盤で母親はパラサイトに殺されてしまう。

村野里美（むらのさとみ）: 西高に通う新一の同級生で、ガールフレンド。性格は大人しく、控えめ。不良少女の加奈ほどではないが、微弱なパラサイト感知能力がある。

広川剛志（ひろかわたけし）: パラサイト一味の主格の一人。地球を汚し他の生物を圧迫する人間を憎み、その天敵であるパラサイトの味方をしていた。この思想に興味を持った田村玲子が仲間に引き入れ、東福山市長選に出馬して当選を果たす。その目的は「食事場」の管理であった。; 本作のタイトルである「寄生獣」とは、演説の際に彼が人間を指していった言葉である。

平間警部補（ひらま）: パラサイト対策の特命捜査を指揮する。年齢は50代前半と思われる。作品の途中で警部に特進する。

加奈（かな）: 新一の隣町に住む北高の女生徒。いわゆるスケバンで最初は光夫とつきあっていたが、新一の強さを見て好意を抱くようになる。特別な感覚によって近くに来た新一の存在を何度か感知し、それを彼との「運命の赤い糸」と思い込んでいたが、実際に持っていたのはパラサイトを感知する能力であり、ミギーに対して反応していたに過ぎなかった。

光夫（みつお）: 加奈の元彼氏。北高の生徒。体が大きく喧嘩も強いため新一たちの通う西高とよく喧嘩をしていたが、加奈に振られ、新一にも力の差を付けられると次第に大人しくなる。感情が欠落していった新一とは対照的な人物。

上条（かみじょう）: 西高の男子生徒で新一の同級生。新一の付き合っている仲間の中ではリーダー的な存在。

長井（ながい）: 西高の男子生徒で新一の同級生。北高の光夫らによく狙われていたゴタゴタメンバーのひとり。

倉森（くらもり）: 興信所の調査員。妻ひとり子ひとりのさえない父親であったが、田村玲子に新一の調査を依頼されて、その運命を大きく狂わせる。

宇田（うだ）: 伊豆のホテルの従業員。妻と別れて人生に絶望し、飛び降り自殺を図ろうとするが、その間際パラサイトの襲撃を受け、驚いた拍子に転落、その結果運良く生き延びる事ができたものの顔の下半分から胸にかけてパラサイト「ジョー」を宿すこととなった。後に新一の友人となる。非常に涙もろい。

浦上（うらがみ）: 殺人犯。多数の猟奇殺人を犯しており、既に逮捕されている。かつて人間で「遊んだ」結果、人間とパラサイトを判別することが出来る。その能力を見込まれ捜査活動に利用されるが、パラサイトとの争いの中で逃走し、興味を抱いていた新一と接触を図る。

[編集] パラサイト

ミギー: 新一の右腕にとりついた寄生生物（パラサイト）。好奇心旺盛で読書家。宿主の身体から直接養分を摂取しているため、独自に捕食活動を行う必要はない。当初は他のパラサイトと同じく感情に乏しく、宿主である新一と自分以外の生死には極めて冷淡であった。また人間を盾に取ろうとする作戦を立てるなど人間社会の常識にはずれる思考から、新一との間には大きな壁があった。しかし新一とのやり取りの中で徐々に感情に近いものを理解するようになっていき、お互い信頼し合うようになる。言語を主に学術書などで学んだ結果、丁寧な言葉遣いになっている。また、新一も知らない間に自動車の運転技術も取得していた。母親を殺し寄生したパラサイトとの一件で、新一の心臓の補修に自分の体組織の一部を使ったため、一日のうち数時間だけ完全に眠っている無防備な状態になってしまう身体になる。; 後藤との戦いの後、眠りにつくことを新一に告げ、以後表面に現れることはなくなってしまったと思われたが、浦上との対決で里美がビルから落下した際に間一髪の所で救っている。このことから、これからは陰ながら見守りつつ、危機が訪れた時は力を貸すとも考えられる。

田村玲子（たむられいこ）: パラサイトの中でも高い知能を持つ個体。田宮良子（たみやりょうこ）の名で新一達の通う高校（西高）の新任数学教師として現れた。「食料」の安定供給のためにパラサイトを組織化し、市長選挙に仲間を出馬させる。パラサイトの生殖能力を確認するため自らAの子供を妊娠したり、新一とミギーを「貴重なサンプル」として観察を続けたりと研究者的な性格を持つ。その一方、変形では2パターン以上の形を持ち、襲ってきた草野ら3体のパラサイトを相手に緻密な戦術を元に圧倒し、後藤をしていい戦いができるだろうと言わしめるなど、戦闘力も非常に高い。常に「自分達は何のために生まれてきたのか?」という事を考えており、その追究の一環としてAとの間にもうけた人間の子供を育てる。

「A」: 田宮良子が新一に紹介したパラサイト。特に名前を持たず、田宮が便宜的に「A」と呼んだ。新一の存在に強い危機感を覚え、彼の通う高校に単身乗り込む。

ジョー: 宇田に寄生するパラサイト。海への投身自殺を図っていた宇田への寄生を試みたが、寄生の初期段階で脳を奪うことに失敗しており、現在は顔下半分から胸部にかけて寄生している。当初は宇田から「パラサイト」と呼ばれていたが、後に世間で「パラサイト」という呼称が一般化したことから「ジョー（下顎）」と名づけられる。言葉や知識を映画やテレビドラマから得たので、言葉遣いはかなりくだけている。

島田秀雄（しまだひでお）: 新一を観察するために、田村玲子が高校に送り込んだパラサイト。当初は新一と明確に敵対せず自ら正体を明かし、人間と同じ食事を摂るなどパラサイトと人間との共存を目指していると語っていた。だが、ミギーによればその言葉の信憑性は怪しいものであり、実際に裏では依然として人間も捕食していた。

草野（くさの）: パラサイト組織では幹部的役割を持つとみられる。邪魔者は手段を問わずに即刻排除するという、「A」に似た暴力的な性格の持ち主。田村玲子を危険視し仲間とともに抹殺しようとする。

後藤（ごとう）: 田村玲子が作り上げた最強の生物。一体の人間の体に宿した5匹のパラサイトを、「統率者」として自在に操る事ができる。極めて高い戦闘能力を持ち、その実力は1匹で自衛隊の一部隊を壊滅に追いやったほどである。「後藤」と言う名前は、5匹(5頭)のパラサイトをその身に宿している事に由来されると思われる。

三木（みぎ）: 本来は後藤の右腕部を務めるパラサイト。「三木」という名前は「右手」に由来する。後藤と同様に頭部（統率者）をこなすことも可能だが、完全に制御をすることは出来ない。そのため、運動性はいまひとつの模様である。後藤とは違い、見かけは陽気で明るい人格で、お調子者。人間の「表情」に着目して、それを真似ようとするが上手くいっていない。

[編集] パラサイトとは

どこからか飛来した、毛のようなもので包まれたボール状の物体から生まれた生物で、見た目は大きなヒルやミミズのようである。一説では宇宙から来たとも言われているが、作者は地球上から生まれたものと明言している。（正確に言えば、物語の冒頭で語られている『'地球上の誰か'』の意志によって生み出されたものであると考えられる。）鼻や口、耳などから侵入し、脳を食べて成熟することで脳の変わりとして機能し、肉体全体をコントロールすることができる。脳を乗っ取った場合、頭部全体の硬度や形を自由に変化させ、刃物や紐などとして扱える。訓練を積めば寄生生物部分を分離させたりもできるが、あまりにも小さくなると「元に戻る」命令が届かず、死滅してしまう。脳は人間並みの知性も保持しており、「考える筋肉」とも言われている。一方で感情や常識などは欠如していることが多い。寄生体は人間部分の身体能力を最大限に発揮できる。また、人間部分の痛覚が麻痺している為、損傷を受けても何も感じない。さらに、微弱ながらお互いを感知する特殊な電波のようなものを発信している。通常は生物1体につき1匹ずつが寄生するが、作中では同時に複数が寄生することも可能とされ、より強力になるという。また、後藤は1体の中に5匹が同居するという、実験により生み出された特殊な個体である。

脳への寄生に失敗する事は珍しいが数例有り、「ミギー」「ジョー」がいた。彼らは宿主とは独立した意思を持ち、常に宿主とコミュニケートするためか、感情に近いものを身につけている。また、ミギーは新一と一部が融合し、パラサイト達と互角以上に戦っている。

人間だけでなく、他の生物にも寄生する事が可能であり、作中ではイヌにも寄生していた。寄生されたイヌは人語を理解するだけでなく、自ら話したりもしている。

生物の本能として、基本的に寄生した個体の同族（人間に寄生した場合は人間、犬に寄生した場合は犬）を捕食の対象とするが、普通の食事でも問題はない。消化器や内臓は、宿主のものを流用しており、寄生生物部分は強力だが、人間部分は後藤を除き生身と変わらないため、強力な打撃などで重要器官を破壊されると倒されてしまう。頭部部分に深刻な損傷がなければ再度他の人間に寄生できるが、リスクは高い（既に寄生されている生物へ移るのは比較的安全である）。生殖機能も人間と変わらないが、パラサイト同士でも人間しか生まれなかった事から、パラサイト自体の繁殖能力は無いものと考えられる。一日数時間の睡眠をとるが、眠りは浅く僅かな刺激で目が覚める。また、火に対しては表面細胞と実際の意識のずれが発生し、対応時に多少の混乱がみられる。