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大仙陵古墳

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

大仙陵古墳国土画像情報(カラー空中写真)(国土交通省)を元に作成。
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大仙陵古墳国土画像情報(カラー空中写真)国土交通省)を元に作成。
仁徳天皇陵 拝所
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仁徳天皇陵 拝所

大仙陵古墳(だいせんりょうこふん、大仙古墳大山古墳とも)は、大阪府堺市堺区大仙町にある百舌鳥古墳群の古墳の一つで、日本で最大の規模を誇る前方後円墳である。宮内庁によって仁徳天皇の陵墓として管理されており、陵号は百舌鳥耳原中陵(もずのみみはらのなかのみささぎ)。一般的には仁徳天皇陵(にんとくてんのうりょう)もしくは仁徳陵古墳(にんとくりょうこふん)と呼ばれる。

エジプトのクフ王のピラミッド、中国の秦の始皇帝陵と並び世界三大陵墓の一つに数えられている。

目次

[編集] 古墳の概要

[編集] 築造時期・被葬者

採集されている円筒埴輪や須恵器の特徴から5世紀前半から中葉に築造されたものと考えられている。前方部埋葬施設の副葬品は5世紀後葉のものと考えられるが、前方部に存在する副次的な埋葬施設の年代として問題ないとされる。

その規模から大王の墓であることは疑う余地がないが、被葬者が誰かは分かっていない。

[編集] 治定について

「記紀」「延喜式」などの記述によれば、百舌鳥の地には仁徳天皇反正天皇履中天皇の3陵が築造されたことになっている。しかし、それぞれの3陵として現在宮内庁が治定している古墳は、考古学的には履中天皇陵(上石津ミサンザイ古墳)→仁徳天皇陵(大仙陵古墳)→反正天皇陵(田出井山古墳)の順で築造されたと想定されており、大きく齟齬が生じている。このことから、百舌鳥の巨大古墳の中で最も古く位置づけられる伝履中天皇陵を伝仁徳天皇陵にあてる見解もある。しかし、この場合は「延喜式」の記述と大きく食い違うことになる。

[編集] 規模

現状での規模は、墳長およそ486m。前方部は幅305m、高さ約33m。後円部は直径245m、高さ約35m。三重の濠の外周は2,718m、その内側の面積は464,124m²という。 486mの墳長は、第2位とされる大阪府羽曳野市誉田御廟山古墳(応神天皇陵)の422mを上回り日本一である。しかし、墳丘本体の体積や表面積では誉田御廟山古墳と甲乙付けがたく、特に体積については誉田御廟山古墳が最大であるとの指摘がある。

[編集] 墳形・周濠

墳丘は3段からなっている。測量図では墳丘の等高線に大きな乱れが観察され、地震などによる大規模な崩壊もしくは人為的破壊があったことが推測されている。 後円部の頂上部分は崩壊がひどいが、もとは直径60~70mの円形であったようである。ここに

被葬者が葬られた後円部と前方部とが繋がるくびれ部には両側に突出した造出し(つくりだし)がある。この造出しの役割は、まだ解明されていない。

現在は三重の濠であるが、もとは二重の濠であった。現在の三重目の濠は1896年(明治29年)に掘り直され、整備されたものである(『堺市史続編』)。この三重目の濠は、大古墳の周りに配置された陪塚(ばいづか)の円墳に3カ所で突き当たりそれらを迂回している。内濠(一重目)の幅は約70m、くびれ部では最も広く東側で115m、西側で120mある。この内濠を囲むのが内堤である。ここに約30cmの円筒埴輪の埋没が各所で確認されている。外濠(二重目)を囲んで外堤が造られていた。三重目の濠があるがその外側に堤がないのが不自然である。

[編集] 外表施設

墳丘には葺石(ふきいし)が存在する。埴輪も存在することが知られており、とくに三重目濠から出土した巫女形埴輪の頭部は著名である。また、造出し近辺で宮内庁職員が須恵器の大甕を採集しており、本来は造出し上に置かれていたものである可能性が高い。埴輪のなかには武人・馬などが多いが、なかには円筒形をしたものがあり、これは結界を張ってなかに人を入らせないようにしていたという。

[編集] 埋葬施設

後円部に存在する埋葬施設は江戸時代には露呈しており、既に盗掘されているようである。江戸時代の宝暦7年(1757年)には、後円部の埋葬施設には長持型石棺が認められている。

前方部正面の中段にも竪穴式石室が築造されている。明治5年(1872年)には、風雨によって前方部前面の斜面が崩壊し、埋葬施設が露出している。その際の発掘調査で石室と石棺が掘り出されているが、この時の記録は関東大震災で焼失してしまっている。残された絵図面によれば、その埋葬施設は長持形石棺を納めた竪穴式石槨で、東西に長さ3.6~3.9メートル、南北に幅2.4メートル。周りの壁は丸石(河原石)を積み上げ、その上を三枚の天上石で覆っている。その中に組合せの長持形石棺が納められ、下半分は埋もれたままである。

[編集] 副葬品

後円部埋葬施設の副葬品は知られていないが、前方部の石室は明治5年の発掘調査のさいに、石棺の東側に「甲冑并硝子坏太刀金具ノ破裂等」が、石棺の北東に「金具存セザル鉄刀二十口斗」が発見されている。

  • 甲冑は、眉庇付冑(まびさしつきかぶと)と短甲で、冑には鋲留めにされた金銅製の小札(こざね)と鉢の胴巻きに円形の垂れ飾りを下げ、眉庇に透かし彫りが施された豪華なもの。甲(よろい)は金銅製の横矧板(よこはぎいた)が鋲留めにされている。また、右の前胴が開閉するように脇に二個の蝶番を付けられており、これらのこれらの組合せは、当時の流行をあらわしたものである。
  • 鉄刀二十口は、把(つか)や鞘には金属製の装具のない簡略な外装の刀、ガラス杯は、緑系のガラス壺と白ガラスの皿がセットになった品であったという。

なお、この調査では石棺の開封調査は行われていない。

[編集] ボストンの仁徳陵出土品

アメリカボストン美術館に仁徳天皇陵出土と伝える鏡や環頭大刀などが収蔵されている。これらの品は、明治41年(1908年)には既に博物館に所蔵されていたようで、梅原末治によって紹介されている。

  • は、刀身が折れて無くなっていて、長さ23センチの把(にぎり、柄)と環頭(柄尻)が残っている。環頭は鋳銅で形を作り、その上に金鍍金がしてあり、環の中央には竜の首を彫刻し、竜首を取り巻く環には双竜を浮き彫りにしている。把には連続した三角形の中に禽獣を浮き彫りにした帯状の飾り金具を付けていて、素晴らしい工芸品である。この類似品は南朝鮮の新羅任那古墳からかなり出土している。

鏡も刀も日本の古墳時代の遺物の内でも第一級の逸品であり、仁徳陵出土品としてもおかしくない。明治5年に露呈した前方部埋葬施設から持ち出され、一時期古墳近くの在家の所蔵物になっていた可能性が大きい。また、それ以前持ち出されたものとも考えられている。

[編集] 陪塚

陪塚は「ばいづか」と読み、陪冢(ばいちょう)ともいう。陪塚は中型や小型合わせて15基あり、前方後円墳一基、帆立貝式古墳はその可能性も含めて五基、大きな円墳二基、円墳または方墳など小さな古墳七基、合わせて15基が陪塚的な位置にある。

西側から狐山、竜佐山(帆立貝式古墳)、孫太夫(帆立貝式古墳)、収塚(帆立貝式古墳推定)で、これら4古墳は大山古墳と同時期に築造された。前方部の南西端を北上すると直ぐ銅亀山(方墳か)、さらに北上し後円部の北方に丸保(防)山古墳(帆立貝式古墳)とその北に永山古墳(前方後円墳)があり、ともに周濠がある。丸保山古墳の南西にもう一基の帆立貝式古墳と南東に墳形不明の古墳がもう一基ある。後円部の長軸線上で外堤上に茶山古墳(直径約55m、円墳)、その東方で外堤上に大安寺山古墳(直径約60m、円墳)があり、陪塚に指定されているが、円墳では大規模な部類に入り検討すべき点が多いという。大安寺古墳の南東直ぐ近くに源衛門山古墳(直径約40m、円墳、周堀)がある。さらに三重目の濠に沿って南下すると塚周り古墳があり、また、南に円墳と方墳らしき古墳があったが、1950年頃に土取工事で消滅した。

[編集] 史料上の記述

[編集] 「記紀」の記述

古事記では、オオササギ(仁徳天皇)は83歳で死去したといい、毛受之耳原(もずのみみはら)に陵墓があるとされる。日本書紀には、仁徳天皇は仁徳天皇87年(399年)正月に死去し、同年10月に百舌鳥野陵(もずののみささぎ)に葬られたとある。

[編集] 延喜式

平安時代の法令集である延喜式には、仁徳天皇の陵は「百舌鳥耳原中陵」という名前で和泉国大鳥郡にあり、「兆域東西八町。南北八町。陵戸五烟。」と記述されている。なお、「兆域東西八町。南北八町。」という敷地がほかの陵墓と比較すると群を抜いて広大であることから、ここに記される「百舌鳥耳原中陵」が当古墳を指していることは間違いないと考えられる。「中陵」というのは、この古墳の北と南にも大古墳があるからで、北側は反正陵、南側は履中陵であると記されている。

[編集] 堺鏡

『堺鏡』(1684年)には豊臣秀吉が当古墳でしばしば猟を行っていたと記されている。また『堺鏡』には当古墳が「仁徳天皇陵」であると記されており、江戸時代には既に「仁徳天皇陵」として信じられていた。そのため、尊皇思想の高揚にあわせて整備や管理強化がたびたび行われている。貞享2年(1685年)に後円部の盗掘坑が埋め戻されたことを手始めに、元禄の修陵(1698年)で後円部墳頂に柵を設置、享保の修陵時(1722年)には一重濠と二重濠の間の堤に番人小屋を設置、嘉永6年(1853年)には後円部に設置されていた勤番所を堤に移転するとともに後円部の柵を石製に変更、元治元年(1864年)には文久の修陵の一環として前方部正面に拝所を造成している。また、この時に墳丘西側で途切れていた一重濠と二重濠の間の堤を接続させる工事が行われ、一重濠と二重濠が切り離されている。翌、元治2年には朝廷より勅使が参向し、現在へとつながる管理体制となった。次第に管理が強化されていったが、幕末までは後円部墳頂などを除き古墳に自由に出入りすることが可能であったという。

[編集] 明治時代

明治5年(1872年)の前方部斜面の崩壊による埋葬施設が露出を受けて、県令税所(さいしょ)篤等による緊急発掘が行われた。この時の調査は、古川躬行(堺の菅原神社の神官・国語学者)の執筆、柏木政規(諸陵寮の役人)の作図による『壬申十月大仙陵より現れし石棺の考へ 同図録』とその添図『明治壬申五月七日和泉国大島郡仁徳天皇御陵南登り口地崩出現ノ石棺并石郭ノ図』および甲冑の図としてまとめられた。ただし、この記録から発掘の過程や程度などの細部をうかがい知ることはできない。

[編集] 現状

歴史の教科書に「世界最大級の墳墓」として掲載され、堺の主要な観光地となっているが、宮内庁の管理方針のため陵域内への自由な出ち入りはできない。最も墳丘に近づけるのは正面の拝所で、二重濠の外側堰堤まで立ち入ることができる。2000年には特別参拝として二重濠の内側堰堤まで立ち入りが許されたことがある。三重濠に沿って周遊路があり(1周約2,750m)、陵域を一周することもできるが、余りにも巨大な墳丘のため、どこから見ても雑木に覆われた単なる小山にしか見えない。

考古学的には仁徳天皇の陵であることに否定的な見解が唱えられているが、築造時期が5世紀中葉~後葉との見方が確定することによって、文献史学上で想定される仁徳天皇の活動時期に近づくとする見解もある。ただし、宮内庁が調査のための発掘を容認していない現状において、学術上からここが仁徳天皇陵であると確定することは不可能であることから、現在では教科書などを含めて「仁徳天皇陵」との呼び名は用いられなくなっている。

堺市内の一部の地名は、この古墳からの方角から付けられており(陵南・向陵など)、付近の住民は親しみをこめて「御陵」(ごりょう)、もしくは「御陵さん」などと呼んでいる。堺市役所高層館21階の展望ロビー[1]からは、巨大な前方後円墳の全容を遠望することができる。

[編集] 交通アクセス

[編集] 関連事項

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