夕霧 (源氏物語)
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帖 | 名 | 帖 | 名 |
---|---|---|---|
1 | きりつほ | 28 | のわき |
2 | ははきき | 29 | みゆき |
3 | うつせみ | 30 | ふちはかま |
4 | ゆふかほ | 31 | まきはしら |
5 | わかむらさき | 32 | うめかえ |
6 | すゑつむはな | 33 | ふちのうらは |
7 | もみちのか | 34 | わかな(上下) |
8 | はなのえん | 35 | かしはき |
9 | あふひ | 36 | よこふえ |
10 | さかき | 37 | すすむし |
11 | はなちるさと | 38 | ゆふきり |
12 | すま | 39 | みのり |
13 | あかし | 40 | まほろし |
14 | みをつくし | 41 | くもかくれ |
15 | よもきふ | 42 | にほふみや |
16 | せきや | 43 | こうはい |
17 | ゑあはせ | 44 | たけかは |
18 | まつかせ | 45 | はしひめ |
19 | うすくも | 46 | しひかもと |
20 | あさかほ | 47 | あけまき |
21 | をとめ | 48 | さわらひ |
22 | たまかつら | 49 | やとりき |
23 | はつね | 50 | あすまや |
24 | こてふ | 51 | うきふね |
25 | ほたる | 52 | かけろふ |
26 | とこなつ | 53 | てならひ |
27 | かかりひ | 54 | ゆめのうきはし |
夕霧(ゆうぎり)は、
- 『源氏物語』五十四帖の巻名のひとつ。第39帖。巻名は、夕霧(下記)が落葉宮に詠んだ和歌「山里のあはれをそふる夕霧に立ち出でん空もなき心地して」に因む。
- 『源氏物語』に登場する架空の人物。夕霧大将(ゆうぎりのたいしょう)とも。光源氏の(世間から見た)長子。母は葵の上。夕霧の名は彼が中心人物になる巻の名に因んで後世の人がつけたもの。
目次 |
[編集] 帖のあらすじ
光源氏50歳、夕霧29歳の八月中旬から冬にかけての話。
柏木の未亡人落葉宮は、母一条御息所の病気加持のために小野の山荘に移っていた。宮に恋心を募らせていた夕霧は、八月の中ごろに御息所の見舞いを口実に小野を訪れる。折からの霧にかこつけて宮に宿を求めた夕霧は、拒み続ける宮の傍らで積年の思いを訴え続けるが、思いはかなわぬままに夜は明ける。
祈祷の律師から夕霧が宮の元で一夜を明かし朝帰りしたと聞き驚いた御息所は、真情を確かめるべく病をおして夕霧に文を送るが、それを北の方の雲居雁が取り上げ隠してしまう。夕霧の返事は遅れに遅れ、御息所は心労のあまり急死してしまう。突然の訃報を受け夕霧は葬儀全般の世話をするが、落葉宮は母の死は彼のせいと恨み心を開こうとはしなかった。
落葉宮はこのまま山荘に残り出家したいと思ったが、父朱雀院の反対にあい、夕霧によって強引に本邸の一条宮に連れ戻された。世間では二人の仲は既に公然のものとなっており、その状況に宮は戸惑う。
夕霧は養母の花散里から事情を聞かれるが、その時の会話がいつの間にか雲居雁に漏れてしまい夫婦喧嘩をしてしまう。雲居雁をたしなめて落葉宮の邸へ通っても宮は閉じこもって出てこようとしない。結局強引に逢瀬を遂げて既成事実を作ってしまう。
翌朝夕霧が邸に帰ると、雲居雁は主に娘と幼い子数人を連れて実家の致仕大臣邸に帰ってしまっていて、連れ戻しに行っても取り合おうとしない。致仕大臣も夕霧の妾の藤典侍も雲居雁の味方で、落葉宮は一人途方にくれるのだった。
夕霧の子は、雲居雁と藤典侍とであわせて約12人いるのだそうだ。
[編集] 派生作品
[編集] 人名の夕霧
光源氏と葵の上との息子。頭中将の甥で、その子達とは従兄弟関係になる。占いから太政大臣になることを約束されている。「好き者」の父に対し終始「まめ人」として語られている。五十四帖のうち「葵」から「蜻蛉」まで登場。真の風流を解さないために器量に欠けるといえるか。
生まれてすぐに母を亡くし(「葵」)、祖母の大宮の邸で育てられる。
大宮邸には頭中将の娘の雲居雁もひきとられており、二人は筒井筒の恋を育んでいた。しかし夕霧が12歳で元服したころ、源氏が彼を大学寮に入れ学問を習得させるために、頭中将は雲居雁を東宮妃にするために、二人を引き離した。その後、花散里が夕霧の養母になる。(「少女」)
互いに文を交わし遠距離恋愛を続けること六年、とうとう頭中将が折れて二人の結婚を認める。(「藤裏葉」)
妻は雲居雁と妾の藤典侍(光源氏の従者惟光の娘)の二人だけという一夫多妻制の当時では珍しい生真面目さだったが、後に親友柏木の未亡人の落葉宮に執心するようになり、怒った雲居雁に別居されるという醜態を晒してしまう。(「夕霧」)その後は毎月夜毎十五日ずつ均等に、雲居雁と落葉宮の邸に通ったという。(「匂宮」)
夕霧は弟薫の出生の秘密にうすうす勘付いてはいたが、それ以上突っ込むことはなく終生庇護したという。
また、光源氏は自分が過去に起こした過ちを繰り返させないために、息子の夕霧には花散里以外の光源氏の妻たちを見せたことはない(花散里は夕霧から見ても美人ではなかった)。が、夕霧は一度だけ紫の上の顔を垣間見たことがある。(「野分」)その時は雲居雁一筋だった為何事も起こらなかったが、その思い出は一生忘れられないものになったらしく、紫の上臨終後に再び垣間見た際には亡骸すら美しいと絶賛している。(「御法」)