三國志シリーズ (コーエー)
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三國志シリーズ(さんごくししりーず)は1985年に株式会社光栄(現コーエー)が発売した『三國志』を第1作とする歴史シミュレーションゲームのシリーズである。同社の信長の野望シリーズと共に、歴史シミュレーションとしては有名どころである。
タイトルの後ろに副題が付く信長の野望シリーズとは異なり、作品ごとにタイトルの後に番号が付く形式となっている(第10作目まではローマ数字だったが、11作目はアラビア数字になった)。
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[編集] 概要
後漢末期から三国時代に掛けて、中国大陸に割拠した群雄(君主)の一人となり、中国統一を目指す。基本は戦争により敵君主の支配地を攻め取って行くが、計略や外交などを駆使し、敵を弱体化させることもできる。また、農地開発や商業投資などを行い、税収を増やして行くのも基本。『信長の野望』とは異なり、シリーズ第1作から配下武将の概念が存在し、優秀な人材を在野から登用し、あるいは他勢力から引き抜き、活用することが作品の大きな柱となっている。
作品によっては、群雄以外の人物を主人公に選ぶこともできる。また、『三國志II』以降は「新君主」としてプレイヤーの作成したオリジナル人物を君主として登場させることができるようになり、作品を経るごとに、オリジナル人物を初めからゲームに登場する人物の血縁関係にするなど、細かく設定できるようになっている。
[編集] ゲーム内容
ゲームの基本的な流れは作品を通じてほぼ共通している。通常は内政で国力を高め、優秀な人材を登用し、隣国を攻め、戦後処理(治安の回復など)を行い、再び隣国を攻めることになる。主な内政コマンドは、開墾、商業、巡察、兵糧施し、改修等である。主な軍事コマンドは訓練、徴兵、募兵(質の高い兵士が集まる)、戦争などがある。主な計略コマンドには駆虎呑狼の計(敵の城主に謀反を促す)、二虎競食の計(君主同士の友好度を低下させ戦争を促す)、埋伏の計(敵に武将を忍び込ませる)、離間の計(武将と君主を仲たがいさせる)、流言(敵の住民治安度を低下させる)などがある。主な人材コマンドには探索、登用、褒美、解雇などがある。主な外交コマンドには同盟、破棄、贈り物、共同作戦、勧告などがある。以上のコマンドを駆使して時には他国を利用し時には敵対しながら、最終目的である中華統一を目指していくこととなる。なお、タイムリミットが設定されており、350年になると強制的にバッドエンドとなる作品が多い(とはいえ年数が経つにつれ武将が次々と死んで攻め込みやすくなるため、普通にプレイすればタイムリミットでゲームオーバーとなることはまずない)。
[編集] 武将の能力設定
本シリーズに登場する人物の能力や設定は、『三國志通俗演義』および吉川英治の『三国志』に準拠している。『三國志II』以降「歴史イベント」と称し、ある一定の条件を満たすと、歴史的事件がゲーム中に再現されるようになった。たとえば「三顧の礼」を再現したイベントは、諸葛亮が劉備の配下となる。特に『三國志X』では、イベントにより強制的に状況が変えられてしまう(たとえば特定勢力が滅亡するなど)ことが多くなっている。こうしたイベントの描写も、基本的には『演義』に基づいている。
しかし、『演義』や吉川三国志を元にした結果、史実に比べ蜀漢がゲームでは大きく有利になった。さらに、『演義』で無能に描かれた人物がゲームでも無能に設定されたことなどから、無能扱いされた蜀漢以外(魏や呉、その他)のファンを中心に苦情が上がった。そのため、作品を重ねるに連れ、『演義』と正史(歴史書の『三國志』)で評価にギャップのある人物は、正史に基づき能力を再評価するようになった。歴史イベントも、一部正史に基づくものが加わった。この他にも、『三國志II』では夏侯惇の読みは「かこうじゅん」だったが、これは吉川三国志の表記である。『演義』および『正史』では「かこうとん」で、『三國志III』以降はこちらの読みに変わった。(『三國志I』では「かこうとん」だったので元に戻したというのが正しい。)
ただし、正史で活躍しないか架空の人物であっても、『演義』などで活躍した人物は、そのイメージを壊さないようあまり評価を落としてはいない。コーエーの『三國志』シリーズ発売は、歴史書『三国志』の日本語訳版完成(1989年)、文庫化(1993年)とほぼ軌を一にしており、ファンにもコーエーにも多大な影響を与えた。本シリーズは『演義』などの三国志を題材にした創作物はもちろん、歴史書『三国志』をファンに普及させる役割も果たしたといえるだろう。
登場人物も、初めは『演義』や吉川三国志に登場した人物で、しかも後漢末期の人物がほとんどだった。従って、タイトルこそ『三國志』だが正式に三国時代に突入した220年以降の年代は武将が足りず、ゲームを進めることが困難であった。それから次第に『演義』では端役だが正史では活躍した人物、さらに『演義』には全く登場しない人物も登場するようになった。年代的にも、280年、呉の滅亡の関係者まで、一応網羅するようになっている。
こうして現在は、『三国志演義』や吉川三国志、横山光輝三国志(シブサワ・コウも同漫画のファンであり文庫版三国志にコメントを残している)など、三国時代を題材にした創作物と、歴史書の三国志(さらに近年は『後漢書』や『晋書』も)の両方が入り交じった設定となっている。そのため、背景を知らない消費者が初めて触れた場合、戸惑うことがあるかも知れない。最近は『真・三國無双』シリーズなどにより、コーエー自身に作られたイメージの流入も起きている。
[編集] 作品一覧
[編集] パソコン、据え置き型ゲーム機
- 「抄本」は、FDドライブ2台装備のPCでなければプレイできなかった「三國志」から、一部シナリオと、「略奪」など使用頻度の低いコマンドなどを省き、ドライブ1台のPCでも動作可能としたもの。売価も安く設定された。後に発売されたファミコン版は、こちらがベース。
- 計略、新君主などの要素を追加
- 都市単位戦闘、新武将、統率能力、水軍能力の追加
- 投石器・連弩などの兵器、捕虜武将が登場
- 陣形(陣形により有利不利がある)、名声(名声により君主の行動数が制限される)などの導入
- 武将の年齢に比例する能力値
- 全ての武将でのプレイが可能
- VIIの強化版
- 再び君主制へ。コンピュータの思考能力を強化。
- 全武将プレイ、戦役の追加
- 君主制、3D一枚マップ、IXの発展版(但し、バグや問題点が多い)
[編集] 携帯型ゲーム機
- ゲームボーイ(GB)
- ゲームボーイカラー(GBC)
- ワンダースワン(WS)
- ゲームボーイアドバンス(GBA)
- ニンテンドーDS(DS)
- プレイステーション・ポータブル(PSP)
[編集] 三國志事件
- パソコン版三國志IIIの改造データを販売した会社を相手取り、コーエーが著作権の侵害だと起こした裁判。高等裁判所で改造データを配ること自体が著作権侵害ではないと請求を棄却した。[1]
『三國志IV』以降、ゲーム内容を拡張する「パワーアップキット」を必ず発売するようになったが、データ編集機能が付けられている。一説には、改造データの頒布への対抗措置ともいわれている。
しかしながら、いまだにデータを改造するフリーのツールが作成され出回っている。この理由として、フリーウェアではパワーアップキットに付属する編集機能以上の編集が可能であること、パワーアップキットが出る前からデータを改造できることなどが挙げられる。現在では中国で作られたツール(通称・大陸ツール)を使用する人もいるほどである。
また、特にパソコン版消費者からは、「パワーアップキット」やプレイステーション2移植版での改良を前提に、通常版で不完全な内容のまま発売するとの批判も絶えない。