ヴンダーチーム

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ヴンダーチーム（Wunderteam、Wonder Team、「驚きのチーム」）とは、1930年代前半にヨーロッパ最強と言われたサッカーオーストリア代表チームのニックネームである。

「紙の男」マティアス・シンデラーを擁し、ウーゴ・マイスル監督とイングランド出身のジミー・ホーガンコーチによっていち早く2人制オフサイドに対応したWMフォーメーションを取り入れたチームは、1931年4月から1934年6月までの3年あまりで30試合して21勝6分3敗という圧倒的な成績を残した。この途中、1932年にはロンドンでサッカーの母国・イングランド代表を相手に3-4という惜しい試合をしており、「英国四協会以外で、イングランド代表にホームで土をつけた最初のチーム」になり損ねた。結局この称号は21年後にマジック・マジャールと呼ばれたハンガリー代表が手にすることになった。

1934年イタリアワールドカップにおいても優勝候補の一角と見られていたが、準決勝で開催国であるイタリアと当たり、審判の地元有利の判定やシンデラーのケガ（相手選手のファールまがいのタックルによるもの）などもあって0-1で敗れた。続く3位決定戦でもドイツに2-3で敗戦して4位に終わった。ただし、この時には既に中心選手であるシンデラーが31歳になっているなど、チームとして峠を越えた状態であったというのも一般的な見方で、監督のウーゴ・マイスル自身も大会の前に「優勝の自信はない」と語っていた。

なお、1936年ベルリンオリンピックのサッカーにおいてオーストリア代表は準優勝を遂げているが、当時のオリンピックのサッカー競技はアマチュアのみの参加であったため、ヴンダーチームの選手は参加していない。ただし、監督のウーゴ・マイスルはオリンピックチームの監督を務めている。

続く1938年のフランス大会予選も勝ち抜き、本戦進出が決まっていたが、オーストリアという国家そのものが直前の1938年3月にナチス・ドイツに併合されて消滅したために参加不能となった。その後、メンバーのうち何人かは統一ドイツ代表にも呼ばれている。「ヨーロッパ最強」と呼ばれ、ニックネームをつけられるほどの代表チームが政治・国家によって強制的に解体された点は、上述のマジック・マジャールが1956年のハンガリー動乱で終焉を迎えたことと共通している。