ワルサーP38

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ワルサーP38
ワルサーP38 ミリタリーモデル
種類	軍用自動拳銃
製造国	ドイツ
設計・製造	カール・ワルサー社ほか
口径	9mm
銃身長	125mm
ライフリング	6条右回り
使用弾薬	9mmパラベラム弾
装弾数	8発
作動方式	ダブルアクションショートリコイルブローバック
全長	216mm
重量	945g
発射速度
銃口初速	350m/s
有効射程	50m
（■ノート ■テンプレート解説）

ワルサーP38 （Walther P38）は、ドイツの銃器メーカーであるカール・ワルサー（カール・ヴァルター : Carl Walther）社が開発した軍用自動式拳銃である。第二次世界大戦中のナチス・ドイツ陸軍の制式拳銃であった。

原型は1934年頃から開発が進められ、1937年に「ワルサーHP」の名称で完成した。翌1938年に制式採用され、P38の名称が与えられた。

それまで30年以上にわたりドイツ軍制式拳銃であったルガーP08に代わる存在であったが、実際には完全置き換えまでには至らなかった。

口径は9mm（9mm×19パラベラム弾）、装弾数は単列マガジンによる8+1発である（特殊なロングマガジンも存在する）。7.65mm弾仕様も少数生産された。

[編集] 特徴

強力な弾丸を安全に発射できるショートリコイル式の撃発システムに、大型軍用自動拳銃としては画期的なダブルアクション機構を組み合わせた近代的な拳銃である。

1930年代まで、自動式拳銃の操作方式はシングルアクションが唯一であった。これはハンマーを起こしてから少しの力でトリガーを引いて撃てるメリットはあったが、暴発のリスクもあり、常に手動安全装置をかけなければ携帯しにくかった。すなわち、安全性を重視すると速やかな発射が不能であった。

一方ダブルアクション機構は、ハンマー（撃鉄）を起こさずにトリガーを引いてゆけば、自動的にハンマーが起き上がり、トリガーを引き切ることで発射できる。若干トリガーは重くなるが暴発のリスクが少なく、手動安全装置への依存性が減り、したがって、構えた銃を素早く発射できる「速射性」が著しく改善される（実際には、安全装置は極力かけるべきであるが）。戦場における交戦時に弾丸が理想的な状態に置かれるとは限らないが、ダブルアクション機構なら不発であっても、再度雷管を叩くことを試行できた。この機能は有効性の高いメカニズムで、20世紀初頭にはリボルバーですでに広く普及していたが、複雑であるため、同時期採用されていたコルト・ガバメントなど多くの大型軍用自動拳銃には採用されていなかった。

ワルサー社は1929年に開発した中型自動式拳銃PPで、自動式拳銃としては、世界でも早い時期にダブルアクション機構を導入していた。

P38のダブルアクション機構はPPのシステムの流れを汲むもので、シングルアクション併用型だった。現在のダブルアクション、シングルアクションともに操作可能な自動拳銃は、ほとんど全てがこのワルサーP38の機構をほぼそのまま利用か、またはそれに改良を施しているといってよい。また命中精度は軍用拳銃としては高く、完成度の高い拳銃であった。従来のルガーP08に比しても故障は少なかったが、殊にスライド上面に大きくえぐられた開口部は排莢を確実にした。

ワルサー独特のショートリコイル機構は、かなり考えられたものである。当時のショートリコイルシステムは、銃口付近をスライド若しくはスライドブッシュ、チャンバ付近をリンク若しくは擬似リンク運動となる様にバレルを保持し、スライドとバレルを直接勘合させて遅延ブローバックを実現したブローニング方式がスタンダードになりつつあったが、この方式ではショートリコイル中にバレルが上を向き、不安定なスライド・ブッシュの精度が弾道に大きく影響する。P38では別体のロッキングピースを使い、ショートリコイル運動はあくまでもフレームと平行に行われ、最初にサイティングした方向に対してバレルが角度を持つ事はない。またこの構造により、精度的に問題があるバレル先端付近の保持を不要とし、バレルが伸びた繊細なデザインを可能としている。スライドが無く閉鎖装置（ボルト）とバレルを直接ロックするマウザー（モーゼル）、ボーチャードシステム（トグルロックシステム）のルガーP08、第2次大戦後はH&KのP7を始めとする一連の特異な機構を持った拳銃など、ドイツの自動拳銃はショートリコイル中にバレルがフレームに対し角度を持たない構造が多いが、図面上バレルに角度変化を起こさせない機構とする点はドイツ人の拘りとも考えられる。 P38のショートリコイル構造は機械加工の簡易化も可能としている。ブローニング方式ではバレルとスライドが勘合する為、硬いSCM鋼を比較的高精度に中繰りしてスライドを製作する必要があるが、P38の構造では横フライス加工だけでバレル、スライド、フレームそれぞれの勘合部を形成する事が可能である。これは、複雑な切削加工が必要だったルガーP08の反省から考案された構造とも想像される。後年、P38の命中精度の悪さの原因がこの勘合構造に起因していると指摘されたこともあるが、それよりバレルが突出したスマートなデザインから来る質量バランスの悪さやフロントサイトとリヤサイトが別部品上にある点、更には軍用銃としての無清掃状態での要求性能や戦時下での切削精度低下などが主な原因と考えられ、設計自体に問題があったとは考え辛い。実際、熾烈な軍採用デザインコンペを勝ち抜いて米軍で正式採用されているベレッタM92シリーズはP38のコピー品とも言える機構を備えており、P38の基本設計がいかに正しかったかを証明している。

[編集] 欠点

スライド上部のカバーは、プレス加工で作られた板バネ状のラッチで引っかける簡単なものであり、連続で射撃を行なうと反動で外れてしまうことがあった。その際リアサイトも外れることがあり、射手を傷つける恐れもあった。戦後に生産されたP1やP88では改良されている。

部品点数はソ連のトカレフ拳銃の倍で、ルガーに比べて簡略化されたとはいえ、ダブルアクション機構ゆえに複雑さは免れなかった。

エキストラクターが左側排除設計のため、薬莢は他の銃のような右手側でなく、左手側に排莢される。

[編集] 経過

黒のプラスチック製グリップを装備している「コマーシャル」（一般向け）と、ベークライト製の茶色グリップで吊環（ランヤード）装備の「ミリタリー」（軍用）の2種類がある。銃身を短くしたモデル（P38K、別名ゲシュタポモデル）も存在した。

P38はワルサー社の他、モーゼル社、スプリー・ベルグ社等でも生産された。スプリー・ベルグ社製のP38はアッセンブリー生産で組み立てられたため、あまり質が良くない。

ヨーロッパ戦線に赴いたアメリカ軍兵士の間では、ルガーP08と並んでこの拳銃を鹵獲することがステータスになるという現象も生じた。表面仕上げとナチ軍の制服にちなみ「グレーゴースト（灰色の幽霊）」と呼ばれ、ある意味で銃大国のアメリカ人をも敬服させた銃である。

ワルサー社は戦後の1956年以降、再建された西ドイツ軍の制式拳銃としてP38を「ワルサーP1」の制式名で再生産した。しかし、P38シリーズの完成度が極度に高かったがゆえに、後継モデルの開発を妨げる要因になったともいわれ（現に、P5を始めとするP88以前のワルサー社製の拳銃は全てP38の焼き直しであった上、P88も成功を収められなかった）、結果的にワルサー社の没落（創業者のワルサー一族から大手銃器メーカーであるウルティマックス社への移管）を招くことになったともされる。

生産自体は現在でも継続されている。

[編集] 登場作品

[編集] 漫画・アニメ

ルパン三世

人気漫画「ルパン三世」の主人公・ルパン三世が使用する拳銃として日本では非常に有名である。テーマソングにも歌われたほどで、「ルパン三世」でワルサーP38を知ったという日本人は非常に多い。

ルパンが使っているのはac41（1941年に製造されたワルサー純正のミリタリーモデル）。かつてはP38と一四年式拳銃などを組み合わせたような外観の形式不明の拳銃（原作より）や、装飾入りのシルバーメタリックモデルのP38だったが、後者をかつての相棒に奪われ、ac41を使用するようになった（TVスペシャル『ワルサーP38』より）。その後も何回か壊されるなどして変わっている（例えば、劇場作品『カリオストロの城』で、防衛システムのレーザーに溶かされる等）。また、原作では当初次元大介も使用していたが、近年のルパンシリーズ作品でもコンバットマグナムを失った場合等は、ルパンから借りることがある。

戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー

「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー」のデストロン破壊大帝・メガトロンが変形する拳銃として知られる。このP38は延長銃身、銃床、スコープが装着された「アンクルモデル」（もともと、アンクルモデルは米国のTVドラマ『0011ナポレオン・ソロ』に登場するオリジナルのモデルである）と呼ばれるタイプで、通常軍用のシルバーモデルが存在しないことから、メガトロンが変形するのはコマーシャル・モデルだと考えられる。

その他にも、知名度の高さから多数の漫画作品に登場している。

砂ぼうず：雨蜘蛛が使用していた。
ゴルゴ13
ジパング (漫画):カール・シュタイナーが使用していた。
名探偵コナン：闇の男爵に変装したコナン（工藤新一）の父親である工藤優作が使用（ただし、実銃ではない贋物。銃口からは吸盤の付いた矢が出てくる）。これは、ルパン三世のファンである原作者青山剛昌によるパロディ。

[編集] 映画

ナチス・ドイツの制式拳銃であったことから第2次世界大戦（ヨーロッパ戦線）ものには、米軍のコルト・ガバメントと並んで非常によく登場する。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

護身用拳銃(P38)（カール・ワルサー本社）
P38K部品図（カール・ワルサー本社）

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