マクロス (架空の兵器)
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マクロス(MACROSS)は、SFアニメ『超時空要塞マクロス』に登場し、番組タイトルにもなった全長約1200mの巨大宇宙戦艦。正式艦名はSDF(Super Dimension Fortress=超時空要塞)-1 MACROSS。人型に変形を行うことができ、戦艦形態は「要塞艦」、人型形態は「強攻型」と呼ばれる。
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[編集] 作品中の歴史
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 修復と発進(1999~2009)
1999年7月、地球に異星人(監察軍)の宇宙船、識別名ASS-1(Alien Starship-1)が飛来。地球をほぼ4分の3周して、進路上の地上に甚大な損害を与えながら、南太平洋上の南アタリア島へと墜落した。大破した船体は、国連代表調査団の調査により、人類の数倍の躯体を持つ異星人の宇宙戦艦であることが判明。しかも、最近まで実戦使用され損傷のため廃棄されたものであり、人類の知らない宇宙で、恒星間規模の宇宙戦争が行われていることが推察された。この調査結果に基づき、いずれ及ぶであろう宇宙規模の戦火に対抗するため、ASS-1の修復・改修を決定。同時に、先進諸国は国境の垣根を乗り越え、地球を一つの国家とする統合政府を樹立することとなった。また、ASS-1がもたらした当時の科学技術を遥かに凌駕するオーバー・テクノロジーは、人類の科学技術の大きな発展と飛躍に多大に寄与することとなった。
こうして統合政府のもとで人類初の恒星間宇宙戦艦への改修が進められた。完成予定は2005年6月であったが、統合戦争の影響などで大幅に遅れ(ASS-1自体、幾度となく反統合同盟に略奪を狙われている)、ようやく10年後の2009年に統合宇宙軍所属艦SDF-1として完成、MACROSS(マクロス)と命名された。晴れて統合軍のシンボルとなったが、長く世界情勢を混乱させた元凶として、必ずしも万人に祝福されたわけではなかった。
マクロスは南アタリア島工廠から離床後、宇宙ドックで艤装を施され、2年後にテスト航海に旅立つ予定であった。しかし、2009年2月の進宙式当日、月軌道上にゼントラーディ軍が出現。これにマクロス艦内に監察軍が残したブービートラップが反応し主砲を自動発射、先鋒艦を撃墜したため、否応無く人類とゼントラーディは交戦状態に突入することとなる。史上初のフォールド航法によって危機脱出を試みるも、目標の月裏側ではなく冥王星近くまで飛ばされてしまい、フォールドシステム自体も消滅してしまう。これに巻き込まれて同時にフォールドした南アタリア島の市民と市街地を艦内に収容。同様に巻き込まれてフォールドした強襲揚陸艦ダイダロス、攻撃空母プロメテウスを宇宙空母アームドの代わりに両舷に連結することとなった。
[編集] 地球への帰還
マクロスは艦内に多数の民間人を抱えたまま、通常エンジンでの地球への単独帰航を余儀なくされた。ゼントラーディ軍はなぜかマクロスのみに興味を示し、たびたび偵察や拿捕を試みてきたが、トランスフォーメーションやピンポイントバリア(後述)、ダイダロスアタックの開発、火星基地の爆破などで苦境をしのぐ。9カ月後の2009年11月、敵包囲網を突破し、からくも地球の太平洋上へと着水。地球帰還の念願を果たした。
[編集] 地球外退去
無事帰還したものの、統合軍はグランドキャノンを軸とした本土防衛体制へ移行しており、ゼントラーディ軍に追われるマクロスは歓迎されなかった。艦内市民の処遇も、異星人との交戦事実を隠蔽するため、反統合勢力のテロにより全員死亡とされていた。市民解放をめざした賭けも、全方位バリアの暴走でオンタリオ自治区を壊滅させたために実らず、ついには囮として地球外退去命令を受ける。しかし後の交戦で敵側の亡命希望者を受け入れたことから、単独でブリタイ・アドクラス艦隊と和平協定を締結した。
[編集] リン・ミンメイ作戦
2010年2月、地球人類の抹殺を図るボドル基幹艦隊約480万隻が出現し、一斉射でたちどころに地球をほぼ全滅させた。この圧倒的劣勢に対し、マクロス・ブリタイ同盟1千隻は一条輝のアイデアをもとに、アイドル歌手リン・ミンメイの歌を「音波兵器」として使用する「リン・ミンメイ作戦」を発動する。ブリタイ艦隊がリン・ミンメイの歌を同時翻訳、マクロスからの映像をゼントラーディの全周波数に配信、歌とキスシーンによるカルチャーショックで動揺した敵陣の混乱(逆にマクロス、ブリタイ陣営の志気は大いに上がった)を突き、グランドキャノン発射で手薄になった宙域を無人戦闘機ゴースト数百機による特攻と、バルキリー隊による反応弾の一斉射撃で敵艦艇を排除しながら進撃する。マクロスは旗艦フルブス・バレンス内にマクロス・アタックを敢行し、敵中枢部にて、これまで温存していた全反応弾を発射、ボドルザー総司令もろとも撃破に成功し、第一次星間大戦を終結に導いた。
[編集] 戦後(2010~)
崩壊するフルブス・バレンスからの脱出に成功したマクロスは、地上へと降下し、強攻型のままアラスカのグランドキャノン砲口部(のちに湖となる)に着底する。同様に航行不能となったブリタイ艦隊の艦艇やボドル基幹艦隊の艦艇も地球へ降下しており(航行可能な艦艇は、他の基幹艦隊へ脱出した。)生き残ったゼントラーディが襲来。マクロス周辺や地球の各地で熾烈な地上戦が展開され、文字通り地球人類最後の砦として奮戦する。
基幹艦隊撃破から半月を経て、ようやく残存ゼントラーディ人との間に和平が結ばれ、戦闘行為はほぼ終了した。マクロスは新統合政府本部(艦内に新指令所を設置)となり、周囲に新統合政府の首都マクロス・シティが建設された。2012年1月、カムジン一派の反乱に際して新指令所は壊滅したものの、旧メインブリッジを使用してマクロスは数年ぶりに飛行、接近するカムジン艦に主砲で迎撃を試みるが直撃できず、主砲発射の影響で主砲の砲身は全壊、特攻したカムジン艦を避けきれずに、ダイダロスを含む右舷が大破しながらもこれを撃退した。
その後は再び修復され、銀河系に発展する地球文化圏の守護像として長く巨影をとどめた。2041年のシャロン・アップル事件では、暴走したヴァーチャルアイドルのAIに乗っ取られ、一時的に再浮上している。
[編集] 諸元
- 基本データ
- (全長)約1200m (全幅)約600m (慣性質量)約1800万t (全備質量)約2200万t
- 人類史上最大の戦艦だが、巨大異星人の戦艦(3000m級)に比べれば中型級でしかない。サイズに比して長大な砲身を持つため、元は監察軍の中型砲艦だったと推察される。当初予定されていた長距離テスト航海では、乗員と家族その他あわせて約2万3千人の乗艦が見込まれていた。
- 構造
- 生存率を高めるためモジュール構造が多用され、もっとも防御機能の高い艦体中央ブロックに主動力炉やフォールドシステム、軍関連施設などが集約されている。身長10mの巨人族サイズを人間用に改修したため、艦内には膨大なスペースがあり閉鎖された無人区画も多い。各部への移動(交通)にはメトロやバイパス道路が使われる。
- 艦内市街地
- フォールドに巻き込まれた南アタリア島の市街地を、強攻型の下脚部にあたる右舷推進部の伝導パイプ上に収容・復元した仮設都市(左舷側は農業・工業生産ブロック)。全長400mほどだが、メインストリートを挟み上下にプレートが何層も重なって構成されている。南アタリア島の避難民(約5万8千人)が日常生活を営み、病院、学校など公共施設の他、長い航海に飽きないよう商業施設、テレビ局や映画館などの娯楽施設も整備されている。また、立体投影により空まで再現されている。当初はトランスフォーメーションによって甚大な被害を被ったが、後にはそれに添った形で区画整理がなされ、被害が出ることは無くなった。成り行き上建設された都市であったが、約1年におよぶ生活体験は後の超長距離移民計画の貴重な前例となった。
- 機関
- (動力系)OTMヒートパイルシステム・クラスター (重力制御系)OTMグラビティコントロールシステム (超時空航行系) OTMフォールドシステム・クラスター
- 主機関は巨大な熱核融合反応炉。オーバー・テクノロジーの重力制御装置を用いれば重力下での浮上も可能であったが、初作動時に調整不足のため、周囲の固定器具に急激な金属劣化が生じ、甲板を突き破り飛び去ってしまった。そのため、以後の航行には主に地球製の噴射推進系(艦底・艦尾部)が用いられた。
- オーバー・テクノロジーの核である超時空空間転移装置。マクロスでは監察軍墜落艦のシステムをほとんどそのまま利用していた。理論は解明されたもののいまだ謎が多く、初作動時に冥王星付近への誤作動を招き、機関自体も亜空間へ消滅した。ブービートラップ発動の余波、或いはテストなしの実戦使用など事故原因は推測されるのみである。
- 宇宙空母アームド(ARMD)
- 本来1、2番艦(01、02)がマクロスの両舷に接続され、兵装ステーションとして機能する予定だったが、ドッキングをゼントラーディ軍に阻止された。劇場版(後述)も参照されたし。
- ともに統合海軍の太平洋地区所属艦で、南アタリア島でマクロス進宙式の警護に就いていた。フォールド事故の際、水密区画以外にいた乗員は死亡。以後、艦尾を改修し、マクロス両舷のドッキングポートへ接続され、右手(ダイダロス)左手(プロメテウス)として機能した。
- 艦載機
- 主砲(バスター・キャノン)
- 艦前部の長大な対の砲身間より発射される大出力ビーム兵器。地球から月軌道上の敵艦を撃破できるほどの射程距離と威力をもつ(連射も可能)。フォールドシステム消失で一時発射できなくなったが、トランスフォーメーション(後述)により解決された。
- その他兵装
- 両肩部の副砲などがあるが、大半は進宙式典用のお飾りに過ぎず、艤装後に稼動する予定であった。そのため本来は陸戦兵器であるデストロイドが防空任務を支援している。もっとも地球への航海中に艤装を進めていたもようで、第27話「愛は流れる」で描かれた最終決戦においては、副砲からも砲火が放たれているのが確認できる。極めて威力の強い反応兵器の使用は、最終局面にむけて温存された。
- 艦の各ブロックを組み替え、エネルギー導線を直結させた主砲射撃体勢(強攻型)へ変形すること。巨艦ゆえに変形には3分を要する。市街地に被害をあたえ、重力制御の不調から航行速度も低下するため、使用は極力控えられる。
- 右腕部のダイダロス前方にピンポイント・バリア(後述)を集中させ、対象(基本的に敵艦)の装甲を貫いた上で、デストロイド部隊による一斉射撃で対象を内部から破壊する強攻戦術。トランスフォーメーションの副産物だが、対艦近接戦における有効性から何度も敢行された。艦同士の戦闘における白兵戦という構図もさることながら、仕掛けられた敵艦の沈む様の描写も含めてインパクトは非常に大きい。
- ピンポイントバリア(PPB)
- フォールドシステム消失によって偶然生じたエネルギーを利用した、直径10m程度の局所的バリア。3人の女性オペレーターがトラックボールを操作し、着弾点に移動させることで防御する。初使用時主砲発射に障害をきたし、苦肉の策として上記のダイダロスアタックが考案された。
- 全方位バリア
- 後に開発された艦全体を覆う巨大円球形のバリア。敵の攻撃をほぼ完全に無力化できるが、安定させることが難しくオンタリオ自治区上空戦において暴走、爆発している。
- マクロス・アタック
- 最終決戦で敢行された特攻作戦。PPVを集中した主砲先端、ダイダロス、プロメテウスを切っ先としてボドル旗艦内部へ強行突入し、中枢コア内にて反応兵器を全弾発射。直後に全方位バリアを展開して誘爆を免れ、損害を最小限に抑えた。
[編集] 劇場版
1984年公開の映画『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』に登場するマクロスは、劇中作(後年作られた記念映画)という作品の設定上、いくつかのデザイン変更がなされている。
- 初期計画どおり宇宙空母アームド-01(左)、-02(右)を両腕にしている。プロメテウス、ダイダロスはゼントラーディ軍の地球爆撃で、すでに撃沈されていた(劇中、プロメテウスの残骸が登場する)。1997年発売のセガサターン版ゲーム『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』のOPムービーでは、スカル小隊の発進後、直撃を受け爆沈するプロメテウスが映像化されている。
- トランスフォーメーションの際のブリッジとレーダーブロックの移動が無くなっている。メインブリッジ内部はTV版と大きく異なっており、TV版では室内描写であった中央指令所が開放型の複層形有視界方式に変更されており(恐らくは本来のブリッジを人間サイズに合わせて複数階に改めたものと思われる。因みにTV版のブリッジは、本来のブリッジの上に設けられている)、大型のメインパネルが前方中央に設置されている。ブリッジ内では多国語が飛び交っているが、これはセクションごとに使用言語が定められているためで、早瀬未沙らメインブリッジの上級管制官は、多言語を理解し指示を行うマルチリンガル教育を受けている。
- 艦内市街地が近未来的な統一デザインに刷新されている。南アタリア島の市街地を移設したのではなく、長距離宇宙航海のモデルケースとしてあらかじめ建設されていたもの、と記述する資料もある。(コンサート会場の屋根は通常時は開放されているが、非常時に観客の安全確保のために閉じられたり、電気自動車の固定用フックが路面に設置されているなど、明らかにトランスフォーメーション対策の設備が市街地各所見受けられる点から、その可能性は高いと思われる。)
- その他、艦体表面ディティールの追加、胴体部分のデザイン変更など。作品冒頭の驚異的な描き込みによる艦影などは、当時メカニック原画を担当した庵野秀明の手によるもの。
[編集] 超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN-版
80年後のパラレルワールドを舞台とするOVA『超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN-』では、マクロスのブービートラップが解除されることなく残っており、時折地球に現れるゼントラーディまたはメルトランディの艦に対して発砲している。
デザインは劇場版に準じている。マクロスシティ中央に強攻型のまま座しているが、OVA『マクロスプラス』のように新統合軍が使用している形跡はなく、完全にモニュメントとして安置されているだけである。とはいえ、メンテナンスは行われているらしく、主砲発射や飛行は可能な状態となっている。episode6 「シング・アロング」にて新統合軍とデータリンクができたところから、新統合軍のデータベースに登録は残されているようだ。
主砲発射の際に両肩の砲身のみでなく、両腕のアームドと脚部のカバーを前方に展開し、この作品独自の発射体勢で主砲を発射する(TV版、劇場版のように、砲身のみでの発射も可能)。メインブリッジは緊急時の脱出艇となっており、分離して単独で飛行することが可能である。
地球に侵攻してきたマルドゥーク艦隊の旗艦に対して浮上し、主砲にて先制攻撃するもののまるで通用せず、反撃にて、直前に離脱したメインブリッジ以外の船体は大破、ほぼ消滅という憂い目にあってしまう。離脱したメインブリッジも、着陸の際の衝撃で大破し、この作品世界でのマクロスは事実上全壊してしまった。
また同作品では、マクロスの砲撃戦艦としてのコンセプトを拡大発展させた後継艦「マクロスキャノン」が登場する。これは、主砲として両肩と両腕に全長4,000メートルにも及ぶノプティ・バガニス級を計4隻搭載するという、超大型決戦兵器である。
[編集] 後継艦
2003年11月にマクロスをベースとした純地球製のメガロード-01が建造開始。のちに宇宙移民船へと仕様変更され、2012年9月に出港。以後メガロード級が10隻以上建造され、超長距離移民船団として地球から旅立っていった。 このメガロード-01はTV版(設定画のみ)と、後年発売された『超時空要塞マクロス Flash Back 2012』でデザインが大きく異なっている。
またメガロード級の後継艦として、さらに巨大な宇宙移民船新マクロス級が建造され、マクロスの名は長く地球人類のシンボルとして引き継がれていくこととなった。『マクロス7』に登場するマクロス7はこの7番艦で、第37次超長距離移民船団の旗艦である。
[編集] 同型艦(クラッシュド)
戦後、ゼントラーディの自動工場衛星奪回へ赴く際に、航路上に大破して浮遊していた監察軍の戦艦。サイズや形状から、SDF-1マクロスのベースとなったASS-1の同型艦である可能性が高い。監察軍との接触は貴重な機会のため、ブリタイ艦に同乗していた早瀬未沙が調査を進言するものの、工場衛星奪回作戦への時間的な制約と、マクロス同様ブービートラップの発動を憂慮したブリタイにより却下された。
[編集] 関連項目
- ブルーノ・J・グローバル
- マクシミリアン・ジーナス
- 宮武一貴(メカニックデザイナー)
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