パンチドランカー

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パンチドランカー（英：Punch Drunker：PD）は、頭部の外傷後に生じる高次脳機能障害のこと。また、そのような状態にある人間を指す。　

[編集] 要因

パンチドランカーになる主な原因は、頭部への繰り返される強い打撃である。特にボクシングは格闘技の中でも頭部にダメージを与え、相手選手の身体的能力を奪うことで勝敗が決するスポーツである為、パンチドランカーという現象に他の格闘技の比べ陥りやすい。

そもそも、格闘技におけるダウンはいわゆる『脳震盪』とよばれるものが主体である。頭部の衝撃により脳全体に回転加速度的な動きが加わり（衝撃により脳実質が頭蓋内で強くゆすられる状態）、脳内にズレが生じて大脳表面と大脳辺縁系および脳幹部を結ぶ神経の軸が広い範囲で切断され、損傷されることから発生する。　

[編集] 症状

パンチドランカーは、結果的に広い範囲で神経の連絡機能の断絶を生じ、前述のような症状を呈することになる。脳への影響は打撃による累計的な損傷量、つまりダメージの蓄積がもっとも警戒すべき点であるといわれており、それゆえ激しい試合を長年続けている選手は十分な注意が必要である。

尚、このような病状を『びまん性脳損傷』もしくは『びまん性軸索損傷（DAI）』と呼び、受傷後のある一定期間を経た後の病状の進行が問題となっている。

頭部打撃の直後の場合は、周囲のトレーナーやコーチ、また自分自身も心配し注意をしていることが多い。異変に気づき、脳の画像検査をした結果、出血や浮腫みなどの変化が早期に認められ、診断も比較的容易である。しかし、微小な出血やダメージが徐々に蓄積されていく場合は、症状も徐々に軽度なものから見られ、選手自身も気づかないことが多いので危険である。認知障害や人格変化は診察室では目立たず、自覚症状や訴えも少なく、失語症も見られない。

そして選手本人が生活上異変に気づく頃には、脳はかなりダメージが蓄積されているものと判断される。

具体的な症例。

認知障害（記憶・集中力障害・遂行機能障害・判断力低下等）
人格障害（感情易変、暴力・暴言、攻撃性、幼稚、性的羞恥心の低下、多弁性・自発性・活動性の低下、病的嫉妬、被害妄想等）

これらによって社会復帰が著しく困難になる場合もある。

[編集] 対処法

パンチドランカーを避けるためには、周囲の証言を聞き出すことや定期的な脳の検査（脳室拡大および白質のびまん性萎縮）でチェックすることが必要不可欠である。どんな小さなサインも見過ごさないようにすることが、悪化させない最良の手段である。近年では、多くの格闘技団体で試合前後の脳の検査を義務付けている。この問題は選手生命だけでなく選手の引退後の人生をも左右するもので、競技に関係するすべてのスタッフは十分に理解を深め、対応することが求められる。