ナイツ (ゲーム)
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ナイツ(NiGHTS)1996年7月5日、セガサターン用ソフトとしてソニックチームの製作でセガより発売された。 独特のファンタスティックな夢の中の世界を心地良いメロディの中 縦横無尽に飛び回り、悪夢の支配から自分たちの夢の世界を守る物語。 作品の音楽や登場キャラクターは、後に発売されるソニックアドベンチャーやファンタシースターオンラインでも採用される程の秀逸な出来だった。 同年の年末には販促キャンペーンとして、セガサターン本体やセガマルチコントローラーにクリスマスナイツ(Christmas NiGHTS:1ステージ限定クリスマス仕様の体験版)がバンドルされた。同作品は非売品であったが、ストーリーが「ナイツ」本編の後日談である、本編のセーブデータによってアンロックされる隠し要素があるなどの事情が考慮され、電話による通販(価格は1,500円)を期間限定で行うという異例の措置が執られた。
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[編集] 世界観と設定
楽しい夢の世界、ナイトピアを消滅させ、夢の世界を悪夢の世界ナイトメアにしようとする「ワイズマン」が突如として生まれ、彼によって人々の夢は悪夢によって支配されつつあった。 ワイズマンは自分の片腕としてファーストクラスのナイトメアン「ナイツ」と「リアラ」を作り出すが、ナイツはその自由奔放な性格と、彼を快く思わないリアラの悪計によって夢の狭間「イデアパレス」に監禁されてしまう。 ナイツは「イデア」があればイデアパレスから極短い時間開放されるため、勇気のイデアを持つ「クラリス」(もしくは「エリオット」)と同化しナイトメアンから奪われたイデアを奪い返してナイトピアを平和な世界にしようと持ちかけるのだった…。
- ナイツ
- 主人公であるナイツは本来「悪夢の世界の住人」でありナイトメアン本来のクレイジーな面も持っているがその性格から生みの親に対して反抗する事となる。彼は空を自由に飛行する能力の他、体の形をたくみに変え、水の中では魚の形に、氷の上では「そり」の形になるなどさまざまな姿に変形することができるが、それ以上にナイツはファーストクラスのナイトメアンであるためビジター(夢を見る人々)と同化するという最大の能力を持っている。しかしイデアパレスに幽閉されている現在は「イデア」が無くては外に出る事は適わず、出られても極短い時間だけである。
- クラリス・シンクレア
- 最初にナイツと出会う事になる15歳の少女。いまや稀である勇気のイデアを持つ。ポニーテールが印象的。芸術家の家庭に生まれ高い感受性を持ち、育ちの良い彼女の夢はミュージカルの舞台に立つことだが、街の100周年記念で開催される作品のテストを受けた彼女は緊張のあまりに失態を演じてしまい、それが原因で悪夢の世界に迷い込んでしまったところをナイツと出会う事になる。
- エリオット・エドワーズ
- クラリスと同じようにいまや稀である勇気のイデアを持つ15歳の少年。彼はいわゆる優等生で、特に得意であるバスケットは同級生の誰も敵わないほど。クールで人前で感情をあまりださない彼は近所のコートで仲間とバスケットをプレイ中、年上のグループに突然乱入され実力の差を見せつけられた上に、彼らに追い出されてしまった。負けると分かっている勝負にアッサリと身を引く彼だが冷静な表情の奥底では屈辱的な思いで一杯となっていた。その夜、彼はその時の悪夢を見、逃げ出そうとするところにナイツと出会う。
[編集] ゲームシステム
プレイヤーは「エリオット」、もしくは「クラリス」となってそれぞれの夢の世界「ナイトピア」に降り立つところからゲームが始まる。ステージ開始当初は人間の姿であり非力だが、「イデアパレス」に幽閉されている「ナイツ」とデュアライズ(同化)することで、飛行能力を得る事ができる。
ゲームの目的は主人公たちの表の夢の世界「ナイトピア」で敵キャラクターに奪われてしまった「イデア」を取り戻し、悪夢の元凶である「ナイトメア」(ボスステージ)へ移動して そこにいるボスを倒すことである。なお、ボスを倒す条件や方法はどれも異なり、かなり独特である。
[編集] ナイトピアでの目的
ゲーム開始当初は必ず「ナイトピア」でゲームが開始する。「ナイトピア」とは主人公たちの楽しい夢の世界でこの世界は意識の象徴である「イデア」によって形成されているという設定である。「イデア」はプレイヤーの周囲を飛び回る光の球体として表現され、
純粋をあらわす「ホワイト」、成長をあらわす「グリーン」、知性を現す「ブルー」希望を表す「イエロー」が存在し、プレイヤーは最初からその全てを持っているが、ものの数秒も経たずにナイトピアに進入して来た「ナイトメア」の住人「ナイトメアン」に奪われてしまう。
「イデア」が無くなればナイトピアは消滅し、夢の世界はナイトメア(悪夢)になってしまうが、直前に忘れかけていた勇気を現す「レッド」のイデアを取り戻し、ナイトピアの世界を守るために戦うという物語である。
プレイヤーは「勇気のイデア」を媒体に「ナイツ」とデュアライズ(同化)し、他のイデアを再び取り戻す事になる。マップは一つの小さな箱庭の世界で作られている。画面は3Dだが実際の動きは2D横スクロール(一部ステージギミックによる例外あり)で、コースは「イデアパレス」をスタート/ゴール地点にして、マップをぐるりと周回する形になる。コースは1つのステージに4つ存在し、コース1に捕らわれた「イデア」を奪還し「イデアパレス」に奉納するとコースが切り替わり、次はそのコース(コース2)のイデアを奪還し……といった形でゲームが進行する。画面上部に「残り時間」が表示される。残り時間とはナイツとデュアライズできる時間(単位は"秒")であり、時間経過以外にもダメージを受けると一定時間ずつ残り時間が減ってしまう。これがゼロになるまでに「イデア」を「イデアパレス」に奉納できないと、デュアライズが解けて「エリオット」もしくは「クラリス」の姿に戻ってしまう。
しかし これは厳密に言うとゲームオーバー(このゲームでは「ナイトオーバー/night.over」と呼ぶ)ではなく、出現するアラームエッグ(卵の形をした目覚まし時計)に捕まってしまうことでゲームオーバーとなる。このアラームエッグは比較的動きが遅いためそう簡単につかまる事は無く、地面から浮いた足場には上ることができないため、少し気をつけていれば捕まることはまず無い。また、ナイツとデュアライズしている状態では出現しない。
また、後述する「イデアキャプチャー」からイデアを取り戻せば再びナイツとデュアライズすることができる。これらの要素のためナイトピアでナイトオーバーになることはめったに無い。これはナイツを「アクションゲーム」というよりも、ある種の「レースゲーム」として製作している意図が感じられる。なお、残り時間は「イデア」を「イデアパレス」に奉納すると120秒(固定)にチャージし直される。
「イデア」(ゲームの目的)を取り戻すのに敵エネミーを倒すというネガティブな行為を必要とはしていないのも本作の特徴である。イデアは「イデアキャプチャー」と呼ばれる機械に取り込まれており、この「イデアキャプチャー」はステージに散らばっている「ブルーチップ」を規定数集めて「イデアキャプチャー」に開放することで破壊できる、破壊された「イデアキャプチャー」からは「イデア」が出てきてナイツの周囲を飛び回り始める。また、「イデア」奪還時にはそのときの残り時間に応じたボーナススコアが加算され、その後「イデア」を「イデアパレス」に奉納するまでの間全ての取得スコアが2倍になる「ボーナスタイム」に突入する。
イデアの開放は人間時でも可能であり、人間時はナイツの時とはまた違い3次元的な動きが可能で制限時間は無いが、前述したようにゲームオーバーのリスクやナイツの状態よりも移動速度に劣り、またスコアが格段に減るなどのデメリットが存在するためハイスコアを狙うことができない。
ちなみにナイツの状態で「イデア」を取り戻した後も「イデアパレス」に奉納せず、通り越せばもういちど同じルートを周回する事が可能であり、ブルーチップやリングなどのスコアアイテムなどが復活している。アイテムを連続で取ったり、「リング」に連続で通ると(リングは一度通ると消滅する)「リンク(Link)」となり、スコアにボーナスが入る。つまり、短い時間より早く「イデア」を奪還し、より多くリンクし、より多く周回を繰り返すことで、スコアをより高くできるわけだが、欲張りすぎると時間切れでデュアライズが解除されてしまうため、その辺りのさじ加減も重要である。
コース終了時には、スコアに応じた評価が表示される。この評価はラップごとに記録され、最高評価は「A」となっている。この評価はステージクリア時の評価に加味され、すべてのステージで「A」評価を出してゲームをクリアすると、最終ステージで通常とは違った展開になる。しかし評価は人間に戻ってしまうと非常に下がってしまうため、いかに限られた時間内で多くのスコアを得るかがポイントである。
こうしてすべての「イデア」を取り戻すとプレイヤーは「ナイトメア」へと旅立つ事になる。
[編集] ナイトメアでの目的
「ナイトメア」では巨大なエネミー「ナイトメアン」と対決する事になる。
「ナイトメアン」はクラス分けされており、ここで戦うこととなる「ナイトメアン」の大半は「セカンドクラス」の「ナイトメアン」である。ちなみに「ナイトピア」に進出している「ナイトメアン」は「サードクラス」。セカンドクラスのナイトメアンのほとんどは巨大な身体を持ち、多様な攻撃でナイツを苦しめる。
注意したいのは「ナイトメア」での時間切れは即刻ナイトオーバーであるため、限られた時間内でナイトメアンにダメージを与え倒さねばならない。しかし中には通常の攻撃だとまったくダメージを与えられないナイトメアンも存在し、彼らを倒すにはナイトメアに用意されたトラップを利用しなくてはならない場合もある。「ナイトメアン」をより早く倒すと、残り時間に応じてボーナススコアが得られる。ボーナススコアは「ナイトピア」で得たスコアを2.0倍~1.0倍まで0.1倍刻みで増加させるものである(倍率は残りタイムにより決定される)。ここで最終的に出たスコアにより、最終的な評価(A~E)が下される。
[編集] アクション
ナイツとデュアライズしている状態では様々なアクションが可能である。
- 「ドリルダッシュ」
- 回転しながら飛ぶアクション。減速してしまったときに素早く最高速に達するほか「ナイトメアン」に対して攻撃するときなどに使われる。ドリルダッシュにはゲージで使用時間が制限されているが「リング」を通過すると回復する。ちなみに、ゲージが無くてもドリル攻撃は可能である(加速はしない)。
- 「パラループ」
- ナイツが空を飛んでいる際に光の軌跡が一定時間表示されるこの光の軌跡を途切れさせず一つの輪にすると「パラループ」が発生し輪の中の「ナイトメアン」を消滅させたりアイテムを同時に大量に獲得したりできる。パラループでのアイテム回収は若干のタイムラグが発生するため、これを有効活用する事でリンクをより長く維持することもできる。なお、特定の場所でパラループをすることにより隠しアイテムが登場する事もある。
- 「タッチアタック」
- ナイトメアンを捕まえている状態(基本的にナイトメアンに触れてもダメージは受けない)でドリルダッシュ(ドリルアタック)するとナイトメアンを弾き飛ばすことができる。タッチ状態でほうっておくとナイツはゆっくりと勝手に回りだし、パラループが発生する。
- 「アクロバット飛行」
飛行中に「L or R」ボタンを押すと入力している方向キーの組み合わせに応じて特殊なアクションを起こすことができる。アクロバット飛行自体にそれほど有用性は無いが、飛び方に「遊び」をつけたりある特殊なリングを通過すると発生する「アクロバットタイム」時にボーナススコアが入る。また、「L+R」を同時に押すとブレーキがかかり、アクロバットタイム時は終了する。
[編集] A-LIFE
本ソフトには「A-LIFE」という人工生命が同時収録されている。
とはいっても、それは別項目で存在するわけではなくマップ上に存在する「ナイトピアン」というキャラクターがそれである。「ナイトピアン」は頭に天使の輪がかかったかわいらしいキャラクターとして表現されており、マップの各所で生活をしている。プレイヤーが彼らに対してネガティブ(パラループで消滅させる)な行為をしたり、逆にポジティブ(ナイトメアンに襲われているのを助け出す)な行為をとるとナイツに対する感情が変化しゲーム中の音楽がパートごとに細かく変動する。
なお、この変動は本ソフトのセーブデータがある状態でクリスマスナイツのおまけモードをプレイすると自由にカスタマイズして視聴する事が可能。ゆえにこのゲームの音楽はプレイスタイルによって千差万別となるという最大の特徴がある。ちなみにナイトピアンとの友好関係はステージごとに個別で存在する。
ちなみにナイトピアンにナイトメアンをドリルアタックでぶつけたり、それでさらにナイトピアン同士がぶつかったりすると新しいタイプのナイトピアン(楽器を持っていたり歌を歌ったりするなど)が誕生することがある。マップ中には卵が稀に存在する事があり、それをタッチして孵化を促すことで新しいナイトピアンが誕生させることができる。
ナイトピアンは「パラループ」で消滅させることもできるが、かなり悲痛な叫び声とともに消えるので、あまり気持ちいいものとは言えない。ナイトピアンと直接干渉する機会はあまり多くなく、プレイしている最中に発生する突発的な出来事によって状況が変化することが多いため、どちらかというと彼らとの干渉はライフゲームに近い感覚である。
この「A-LIFE」はドリームキャスト用ソフト「ソニックアドベンチャー」、「ソニックアドベンチャー2」で「チャオ」という形になって導入される事となるが、そちらはライフゲームというよりも育成ゲームに近い形であり、原型をとどめているとは言いがたい。ちなみに「ファンタシースターオンライン」では、ある条件を満たすことにより「ナイトピアン」と「チャオ」の形をした防具を作ることができることから、これらキャラクターはソニックチームにとって、かなり思い入れの強いキャラクターなのかもしれない。
[編集] ゲームソング
ナイツで使用されているBGMの大半は「佐々木朋子」(ささき・ともこ)によって作曲されている。本作はゲーム本編もさることながら、特に音楽に対する評価も高く、実際に世界観とマッチした素晴らしい出来である。なお、佐々木は2001年にセガから分社化したウェーブマスターに移転し、「ROOMMANIA#203」などのシリーズに携わった。
[編集] 続編を望む声
本ゲームソフトウェアはディープでマニアックなファン層が存在し、一度プレイすると虜にさせる何かがある。それゆえに次期ハードウェア(ドリームキャストなど)で続編を作る事が望まれたが、2005年現在にいたるまで関連するソフトはクリスマスナイツのみである。
ちなみにソニックアドベンチャーのあるステージでは「ナイツ」がゲスト的に出演し、そのマップの一部もかなり忠実に再現されている。 セガの様々なゲームがEyeToyのミニゲームになっているセガスーパースターズにはナイツも入っており、プレイヤーが実際に両手を広げて大空を飛んでリングをくぐるという内容になっている。 その他にもゲームボーイアドバンスで発売されたソニック関連のゲームソフトのミニゲームやiモードのアプリとしても登場しているが、いずれも正式な続編ではない。
他にはないかなり特異である作品であるが、非常に高い完成度を誇るものの、発売されたハードウェアがセガサターンであったため3Dグラフィックは少々荒く、そのためむしろ続編というよりも、あまり手を加えずにさらに高い処理のできるハードウェアへの完全移植を望む声は多い。
また、2005年度に入って、続編である「ナイツ2(仮称)」が公式な発表ではないものの ニンテンドーWii向けに出すらしいアナウンスがされた。 しかし翌2006年に発売されたファンタシースターユニバースで犯してしまった失態からも見て取れるように、現状のソニックチームにオリジナル版を上回れるだけの器量があるとは言いがたい。劣化コピーに終わることだけは避けてもらいたいところである。
[編集] 補足
- 元々はプログラマである中祐司氏が、リードプログラマとして自身の手でプログラムを書いた最期のソフトである。当時の役職は、CS第三研究開発部部長。これ以降は、プロデューサー業、後に株式会社ソニックチームとして分社化後は、社長業を担当した。
- ソニックチームのブランドであるが、当時はCS第三研究開発部内において、中祐司氏が何等かの形で関ったプロジェクトに冠していた(いわば自称の)ブランドである。実際にソニックチームが独立した組織となったのは、株式会社ソニックチームとして分社化されて以降である。
- 本作はセガサターンの周辺機器、マルチコントローラー(いわゆるアナログ方向キー)対応であるが、むしろマルチコントローラーが無ければ操作に難がある。