ディスカバー・ジャパン
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ディスカバー・ジャパン(DISCOVER JAPAN)とは、日本国有鉄道(国鉄)が個人旅行客の増大を目的に1970年から始めたキャンペーン。個人旅行の拡大や女性旅行者の増加などの社会情勢の変化とマッチし、キャンペーンとしては成功したと見なされている。キャンペーンの副題は「美しい日本と私」。
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[編集] 経緯
[編集] 背景
国鉄は、1964年に東海道新幹線を完成させて(1964年10月1日国鉄ダイヤ改正も参照)東京~横浜~名古屋~京都~大阪間の輸送力を確保し、1968年10月1日のダイヤ改正(ヨンサントオ)で在来線の輸送網強化を一応完成させた。1970年3月から9月に開催された大阪万博では、この国鉄輸送網が活躍して大量の乗客を輸送した(当時万博輸送と呼ばれた。大阪万博の交通も参照)。大阪万博は今まで団体旅行しか経験しなかった多数の国民の目を、個人的旅行に向けさせるきっかけとなった。国鉄は1970年10月に万博終了後の旅客確保対策として、個人旅行拡大キャンペーン「ディスカバー・ジャパン」を開始した。
[編集] キャンペーン開始
従来のキャンペーンは特定地域に絞ったものが多かったが、ディスカバー・ジャパンは「日本を発見し、自分自身を再発見する」をコンセプトに、全国的に進められた。このキャンペーンは広告代理店の電通が全面的にプロデュースを行い、副題も含めたキャンペーン名も電通の創案による。ちなみに副題の「美しい日本と私」は、川端康成のノーベル文学賞受賞記念講演「美しい日本の私」をアレンジしたものである。
このキャンペーンは 車内や駅のポスター以外に種々のメディアでも宣伝された。駅スタンプはそれまで特定観光地にしか設置されていなかったが、このとき国鉄全駅に設置された。その他 機関紙の発行、新聞での特集記事、テレビ番組の設定などがキャンペーンを盛り上げるために実行された。
[編集] テレビ番組
キャンペーン開始と同時の10月に、国鉄提供によるテレビ番組「遠くへ行きたい」が始まった。これは永六輔が一人で日本全国を旅して、各土地の名所紹介や住民とのふれあいをテーマにした番組だった(この番組は形を変えて現在も続いている長寿番組である)。永六輔が作詞した同名の主題曲とともに当時の国民の旅行への憧憬をさそった。
[編集] ミニ周遊券の設定
それまでの周遊券は「周遊指定地を2箇所以上回るオーダーメイド版:有効期間1ヶ月」、「北海道や九州などの広域をまわるレディメイド版:有効期間最大20日、名称一般用均一周遊乗車券」等があった。しかしオーダーメイド版は条件がややこしくて一般客向きではなく、またレディメイド版は範囲が大きすぎて小旅行には向かないものであった。ディスカバー・ジャパン開始と同時に、レディメイド版の周遊範囲を限定して、安価・短期間の旅行に適したミニ周遊券が設定された。同時に従来のレディメイド版はワイド周遊券と改称された。
[編集] キャンペーンの推移
1972年の新幹線岡山開業、1975年の同線博多開業と国鉄の新幹線網が延びていった。また1970年に女性雑誌アンアン、1971年に同ノンノが創刊された。両誌は各地の小京都や倉敷・萩などのシックな町並み、中山道の静かな宿場(妻籠宿・馬籠宿など)を紹介して、若い女性の個人旅行スタイルアンノン族を生み出した。各観光地には小グループの女性客がたくさん訪れるようになり、観光地は女性をターゲットとした街造りを意識するようになった。
[編集] 後続のキャンペーン
アンノン族に代表される女性客が増えるにつれ、国鉄のキャンペーンも女性を重視していった。1977年1月に始まった「一枚のキップから」は長続きしなかったが、1978年11月には山口百恵が歌う『いい日旅立ち』をキャンペーンソングとした「いい日旅立ち」が始まった。また1980年には国鉄全線完乗を目指す「いい旅チャレンジ20,000km」が始まった。
1980年を過ぎると、国鉄の巨大赤字が社会的に大きな問題となり始め、労使間の紛争も多発するようになった。国鉄は赤字ローカル線(特定地方交通線)の廃止を進めるようになり、このような大型キャンペーンも下火になっていった。
[編集] その後
1984年、国鉄は「エキゾチック・ジャパン」のキャンペーンを開始した。これは郷ひろみが歌う『2億4000万の瞳』(歌詞に上記キャッチフレーズが含まれる)をキャンペーンソングとした新たな取り組みであった。
なお、現在JR西日本が「ディスカバー・ウエスト」(DISCOVER WEST)という、「ディスカバー・ジャパン」をもじったキャンペーンを行っている。
[編集] 関連図書
- 『あっプロデューサー―風の仕事30年』藤岡 和賀夫 (著) 求龍堂 ISBN 4763000233 2000年
[編集] 外部リンク
- (財)日本交通公社 旅の図書館:旅に関する図書・資料がそろう
- ディスカバージャパンキャンペーンにおける観光の視点と対象に関する研究(東京工業大学大学院情報環境学専攻十代田研究室)