チェロソナタ (ショパン)
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フレデリック・ショパン作曲のチェロソナタト短調Op.65は1846年に完成された。ショパンは数少ない室内楽曲のうち、ピアノとチェロのための作品を3曲残しているが、そのほとんどは青年期に書かれたものであり、この作品は最後の室内楽曲であるばかりでなく、生前に発表、出版された最後の作品である。ショパンがピアノの次にチェロを愛し、そのための作品を多く（と言っても3曲だが）残したことは、親友であった、チェリストのオーギュスト・フランショームという人物の影響が大きい。この作品では、ピアノとチェロ両方にきわめて高い技術が求められる上、ショパンには珍しく主題労作や、対位法などの技法が多用され、2つが協奏しながら、融合するという一種の完成形を示している。その為、音楽的にもかなり難解であり、クラシック音楽としては比較的親しみやすいショパンの作品の中で、異彩を放っていると言ってよい。これらの点からベートーヴェンにおける、クロイツェル・ソナタとの共通点をあげることができるともいえる。
チェロはヴァイオリンよりも音域が低く音量はピアノに対抗できる豊かさがある。ベートーベンが初期に9曲後に1曲のヴァイオリンソナタを書き残しているが、多くはヴァイオリン助奏つきのピアノソナタになっていて独立対等になってはいない。ショパンの作品中にヴァイオリンソナタがなくチェロソナタのみがあるのはチェロ奏者との交流だけでなく、ピアノと対等にソナタを構成する楽器としてのチェロの豊かさを評価していたからであり、ショパンのピアノ中心主義の一面が現れている。
- 第1楽章 Allegro moderato ソナタ形式
- 下降音型を特徴とする第1主題、瞑想的な第2主題からなるが、かなり高度な和声法・転調技法・対位法・展開技法などが駆使されているため、当時、あまりにも難解な曲とされ、演奏されなかったといわれる（ショパンとフランショームによる最初の演奏会でも第2楽章以降のみ演奏された）。冒頭からピアノの主題－カデンツァが流れチェロが野太く主題で答える。第一主題は再現されないが、第二主題が再現されるのは他のソナタと同じ。転調も用意してト短調に止まらず、変ロ長短調変ニ長調とピアニズムにも配慮している。コーダはチェロの凱歌。
- 第2楽章 Scherzo, Aligro con brio ニ短調
- 拍節感がはっきりしたスケルツォ主題は転調が繰り返され色彩感豊かであり、さらにニ長調に転じてチェロがレガートで歌う美しいトリオ主題が対比されている。トリオのピアノ伴奏（右手声部）はショパンらしい広い音形である。
- 第3楽章 Largo 変ロ長調
- これより約10年前に書かれた、ピアノソナタ第2番の葬送行進曲との関連性がしばしば取りざたされる。この作品の中ではいくらか親しみやすい楽章である。
- 第4楽章 Finale, Allegro ソナタ形式
- スケッチのみで残されている未完の、オクターヴのカノンの半音階的な主題が使われ、これだけで音楽の複雑さを伺える。この主題が対位法的に絡み合って進む。転じて第2主題は全音階的な重音奏法となり、対比されている。後に飛び跳ねるようなコデッタが続く。音楽は、フィナーレにふさわしい、白熱した展開を繰り広げたあと、最後はコデッタ主題により喜ばしく結ばれる。
