ソース焼きそば
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ソース焼きそば(ソースやきそば)は、中華麺を野菜や肉と共に炒め、ウスターソースまたは濃厚ソース(焼きそばソース)に絡めて味付けした麺料理。
中華料理の焼きそば(炒麺、チャオミエン)が日本で独自の発展を遂げた麺料理で、日本では全国的に普及している一般的なメニューである。第二次世界大戦直後の闇市の屋台で生まれたとされる。日本で単にやきそば、焼きそばと呼ぶ場合、このソース焼きそばのことを指す場合が多い。縁日の祭の屋台、海水浴場の海の家、学園祭の模擬店等での定番メニューとして人気がある。焼きそばを用いたお好み焼きの一種「モダン焼き」や、焼きそばとご飯を組み合わせた料理「そばめし」などの派生料理があり、また、焼きそばをホットドッグに使用するパンに挟んだ「焼きそばパン」も、調理済みパンの定番商品となっている。新潟県には、焼きそばに似た薄味の麺の上にパスタ用のミートソースをかけた「イタリアン」というファーストフードがある。
近年では(2006年現在)、この焼きそばを名物に位置付け、地域振興を図っている地方都市もある。秋田県横手市の「横手焼きそば」、群馬県太田市の「太田焼きそば」、静岡県富士宮市の「富士宮焼きそば」がその代表例である。宮城県石巻市、同気仙沼市を始めとする宮城県沿岸地域では、焼きそばと言えば一般的な黄色い中華麺ではなく、茶色のせいろ蒸し中華麺を用いる。この焼きそば専用の中華麺を開発したことで、石巻市は焼きそば発祥の地を公言している。
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[編集] 調理法
フライパンに油を引いて熱し、まず豚肉から焼く。火が通ったら、5cm角に切った野菜類を入れ、塩、胡椒で下味を付けて炒める。蒸した中華麺を加え、フライパンの上でほぐしながら炒め、ウスターソース類をかけて麺と具に味を絡める。なお、味付けに醤油を若干加える場合もある。麺がほぐれにくい場合は、水か湯を加える。麺はあらかじめ電子レンジで温めておくと、混ぜるだけでよくなり、手早く焦がさずに作ることができる。焼き上がったら、紅生姜・天かす・干しエビ・鰹節の粉末(削り粉)・青のり(または刻み海苔)・マヨネーズなどを付け合わせて完成。
フライパンではなく鉄板を調理に使用する場合は、具材を投入する順序が一部異なる。
[編集] 麺
現在、市販されている焼きそば用の麺は、その殆どが製麺所が製造する蒸し麺である。生麺を使う場合も、蒸す方が仕上がりがべた付かず、食感が良いものにできる。沖縄県では、本場沖縄そばを使用する場合もある。 市販用の蒸し麺では東洋水産の「マルちゃん 焼きそば3人前(ソース付き)」が代表的な製品。
[編集] 具材
ソース焼きそばの具材には、肉類では豚肉を、野菜類ではキャベツ・ピーマン・ニンジン・タマネギを主に使用する。
[編集] インスタント食品
インスタント食品として製造・販売されている焼きそばは、袋麺タイプのものとカップ麺タイプのものがある。フライ麺または乾燥麺が使用される。
[編集] 袋麺
[編集] 調理法
フライパンに水を入れて沸騰させ、麺を入れる。水が減り始めたら麺をほぐし、個々で用意した具材を投入する。水が無くなる直前に製品付属の粉末ソースを加えて掻き混ぜ、皿に移す。最後に青海苔を振りかけて完成。
[編集] 製品
日清食品の「日清焼そば」が代表的な製品。他に、フライ麺の表面に味を付けた「ホンコンやきそば」という製品がヱスビー食品から発売されている(北海道、大分県など地域限定)。水と火力の加減が必要で、具にもうまく火を通すとなると調理が難しい事もあり、カップ麺タイプの焼きそばに比べると市場は限られている。実際、メーカー各社が発売している袋麺タイプの焼きそばは種類が少ない。
[編集] 起源
日清食品の研究員が、鍋代わりにフライパンを使って袋麺のインスタントラーメンを調理していた最中、誤って水分を蒸発させてしまった。その時出来たものにヒントを得てインスタント焼きそばは開発された、とする説がある。
[編集] カップ麺
[編集] 調理法
製品に付属するかやく(フリーズドライにした野菜類・肉・小エビなど)を容器から取り出して麺の上に開け、その上から熱湯を麺が浸るまで注ぐ。一度開けた蓋を再度被せて封をし、所定の時間(3~5分程度)置いて湯が麺に浸透するのを待つ。その後、蓋の「湯切り口」を通して湯を捨てる。蓋を取り外したら、製品付属のソースを麺にかけてよく掻き混ぜ、最後に青海苔を振りかけて完成。
カップラーメンと違い、麺を戻した湯を「捨てる」という工程があることから、消費者が失敗するケースが多い。主な失敗例としては、
- 湯を捨てる事をせずにソースを投入し、薄いソース味のラーメンにしてしまう
- 湯を捨てている最中に蓋が外れてしまい、麺が容器の外に飛び出してしまう
- 同じく湯を捨てている最中に、飛び散った湯により火傷を負う
- ステンレスのキッチンシンクに湯を捨てると「ボコン」と音が鳴るので非常に驚く(失敗?)
などがある。1.に関しては明らかに作り方の説明をよく読まずに調理した消費者側に問題があるが、メーカー側でもこれら失敗例への対策として、製品に様々な工夫を凝らしている。ポリスチレンシート製の容器を製品に採用しているメーカーでは、きちんと蓋がしやすいよう嵌め込み式にしている。発泡スチロール製の容器を採用しているメーカーでは、蓋部分となるラミネート加工の防水紙に二重シール式の湯切り口を設けている(封をした外側のシールを剥がすと、その下からいくつかの小さな穴が開いた湯切り口が出てくるという仕組み)。いずれのメーカーでも、製品には蓋部分に熱湯に対する警告を印刷している。4.に関してはシンクに直に湯を捨てない、またはあらかじめ「“ボコッ”て鳴るな」と心の中で再確認しておく事でダメージを軽減できる。
[編集] 製品
「焼く」調理過程が無い為、厳密には焼きそばとは言えないが、現在は袋麺タイプのものよりも広く浸透し、定着している。1974年にニュータッチが最初に発売された。1976年5月に日清食品が日清焼そばU.F.O.を発売し、翌1977年にピンクレディーを「日清焼そばU.F.O.」のテレビCMに起用してから爆発的人気になった。
日清食品の他、エースコック、東洋水産(ブランド名「マルちゃん」)、まるか食品(ブランド名「ペヤング」)などのメーカーが発売する製品が有名。2006年現在、トップシェアを誇る製品は日清食品の「UFO」で、日本国内だけでなく中国上海でも製造・販売されている。一時期、お湯を捨てる必要のないカップ焼きそばが明星食品から製造・販売されていたが、「麺がふやけ過ぎて不味い」と消費者からの評判が悪かった為にわずか2、3年で製造中止となった。
商品の性質上、湯切りをしても完全に水分を除けないことが多く、麺に水っぽさを感じて敬遠してしまう消費者もいる。麺に残る水分を逆に生かす為に、カップ焼きそば添付のソースには粉末タイプのソースや高濃縮で味の濃い液体ソースを採用している。逆に、カップラーメンと違い汁気は殆どない為、飲み物が無いと食べ辛いと感じる者も多い。この意見に応え、麺を戻した湯を再利用することで手軽なカップスープを作ることができる粉末スープを封入した製品もある。東北地方、甲信越地方限定の「焼そばバゴォーン」、北海道限定の「やきそば弁当」(いずれも東洋水産)がその代表例である。
2006年には、事前に遠赤外線で焼いて製品化した「ホントに焼いた 本焼そば」が、エースコックから発売された。