ステージガン
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ステージガンとは、映画や演劇等で使用する小道具銃の一つ。おおよそモデルガンや、国によっては日本国の銃刀法で定義される「模造銃」と同種のものと考えて良い。国によって利用できるステージガンの種類や機能がその国の銃器に関する法律に比例するため、様々な形態の物がある。
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[編集] ステージガンの種類
一言でステージガンといっても、その使用するシーンによって大まかに2つの種類に大別される。
[編集] プロップガン
映画の撮影や演劇などで、俳優が銃撃戦を演じるとき、リアルな発射炎や動作機構を必要とされる際に使用されたり、演出上その銃を構えた近景撮影などで、銃を構えた俳優とのコラボレーションでの格好良さを必要とする際にリアルな外観を必要とする時に使用される物である。主に日本ではモデルガンやエアーソフトガンのような外観的に本物と見まごうばかりの日本製玩具銃特有の性質を利用して、それらを撮影用に銃刀法の許す範囲で発火機能などを撮影用に改造されたものを使用する場合が多い。最近では更に発火演出を効果的に見せるために、CGなどを合成する場合もある。日本映画創世期には警察官立会いのもと実銃が貸し出され空砲作動で撮影したり所持許可を持った出演俳優の個人所有銃器が撮影に使用されていた事もあった。高倉健主演の「駅-ステーション」では数々の実銃が画面に登場し迫力を出す事に成功している。
ハリウッド映画など、銃器規制がゆるやかな国で使用されるプロップガンは空砲発射が可能な実銃を使用するのがほとんどである。発火方式としては、弾丸の装着されていない実包の薬莢の先端を潰した物や、ゼリーなどで薬莢の先端を埋めた空砲を使用する。但し元が実銃なので、火薬なども実銃と同様の物や発火演出向上のため(マズルフラッシュが効果的に出るよう調整された特殊な火薬を使用する)にそれ以上のものを使用する場合が多いため、至近距離で発射する撮影などでは発砲時に飛散するゼリー等の軟体物のカスやその強力な発射炎やガスなどでケガをする俳優も多く、事実死亡事故も発生しているので取扱には注意を要する。
米国では、こういったステージガンを専用に制作するラボが数多くあり、古今東西の実銃をステージガンに改造して在庫し、中にはSF映画などで使用される銃などを特別に設計制作して貸し出すなどしている。
[編集] ラバーガン
映画の撮影などで、俳優がアクションシーンを演じる際、手に持った銃を放り投げたり、グリップで相手を殴るような演出が必要とされる場合に使われる「ゴム製」のステージガンである。このような演出を行う場合、上記プロップガンでまともにやっていれば、貴重なプロップガンを破損させたりするので、このようなものが使用される。このラバーガンが使用されるシーンは基本的に動きが速く、銃自体が注視されるようなシーンはほぼ皆無なので、基本的に銃自体は非常にラフな作りである。製造方法はいたって簡単で、基本的な製造法としては元となるプロップガンをシリコンなどで型を抜きゴムを流し込んで出来上がりである。あとはバリなどをとってそれらしく整形するだけのことである。アメリカでは警察などで、相手を武装解除する格闘戦の訓練用にも用いられている(赤く着色されているため「レッドガン」の別名がある)。
[編集] 著名なステージガン
以下に映画演劇で使用された、その作品を代表するような、その銃の名を聞けばその作品がすぐさま連想されるような著名な銃を列記。
[編集] S&W M29
(映画・ダーティハリーシリーズ) 主人公ハリー・キャラハン刑事が使用する、あまりにも有名な44マグナム拳銃。本映画公開と同時に本銃の実銃の売上が飛躍的に向上したのは有名な話である。本映画でのM29の威力は誇張が多いので有名であるが、特に発射の効果音はあまりにかけ離れていることは映画ファンの語りぐさである。しかしながらこれらの誇張演出も、実際実銃でも威力が絶大な本銃とハリー刑事のキャラクター性を際立たせることに貢献している。シリーズ後半ではロングバレルの44オートマグも登場する。
[編集] M60
(映画・ランボー)
シルベスター・スタローン演じるランボーが使用した、米軍現用の軽機関銃である。本作が一介のこの軽機関銃を一躍有名にした。その圧倒的な破壊力と迫力は今なお本映画以降数々の作品にヒーローの武器として登場している。現実には片手でフルオート発射することはスタローンといえどまず不可能で、空砲だからこそ出来たシーンである。
[編集] ワルサーPPK及び黄金銃
(映画・007シリーズ)
映画、007シリーズの主人公、MI-6の諜報員ジェームズ・ボンドの愛銃である。ワルサーPPKといえば007ともいわれるほど有名。本映画ではポスターなどでサイレンサー付きPPKの方がメジャーなイメージがあるが、実際劇中でボンドがPPKにサイレンサーを付けて活躍する事はあまりない。
007シリーズの中でPPK以外で、特に有名なステージガンは、シリーズ「黄金銃を持つ男」に登場した秘密兵器「黄金銃」の名で知られる敵のボスが使用していた秘密合体拳銃である。普段は黄金製の万年筆(バレル)、カフスボタン(トリガー)、シガーケース(グリップ)ライター(薬室)を変形合体させることで、一丁の単発拳銃を組み上げることが出来る。当時はこの銃のイメージが大ヒットし、スパイブームも相まって、カメラが変形して銃になるモノや、トランシーバーが変形して銃になるモノ、その通り上記のような物品を合体させて銃にするような玩具やプラモデルが大流行した。
[編集] AK47
(数々のアクション映画・演劇作品)
ステージガン数あれど、この銃ほど悪役に愛される銃は他にはない。必ずと言っていいほど悪役が使用するライフルである。元々第三世界などでコピーが氾濫し、「小さな大量破壊兵器」とまで揶揄される銃であるのがその所以であろう。
[編集] マックスショットガン
- 画像リンク(個人ページ):http://www.7rhkp.com/madmax.html
(映画・マッドマックス)
映画、マッドマックスで主人公マックスが使用する水平二連型ショットガンを銃床、銃身共に切りつめた独特のデザインラインを有するショットガンである。このショットガンは登場当時、映画ファンに鮮烈な印象を与え、本主人公を代表するものにまでなった。但し実際は本銃には裏話があり、なぜこのような銃を主人公マックスが持つに至ったかというと、この映画第一作が撮影されたオーストラリアでは、法律上現用の実銃(いわゆる機関銃や自動拳銃など)の所持が法律で禁止されており、映画の撮影でもその例に漏れなく適用されている。但し比較的古い銃(雷管式リボルバーや、古い開拓時代に使用されたライフル、散弾銃)の所持は認められているので、こういったオーストラリアの法律上、このようなチョイスになったのである。
[編集] AUTO9
- 画像リンク(エアガンKSC社):http://www.ksc-guns.co.jp/2006/mainp.html
(映画・TVドラマ・ロボコップ)
主人公ロボコップ(マーフィー)が使用する架空の大型拳銃。ベレッタM93Rを改造したステージガンである。ベースのM93R同様に3点バーストも可能。この銃と言えばロボコップが連想されるほどの有名なステージガンである。公開後、後に玩具銃メーカー旧MGCによってエアーソフトガンも発売された。この旧MGC製の玩具銃が本物のステージガン以上にあまりにも出来がよかったために、この玩具銃を日本の銃器雑誌のスタッフが当時クランクインしていた「ロボコップ2」の撮影スタッフに見せたところ、「俺たちが何ヶ月もかかって作ったAUTO9が、日本じゃこんな精巧でリアルなオモチャとして、そこらの玩具店で売ってるのか!?」と驚愕し、苦笑したという。そしてこの玩具銃を認めたスタッフは、実際の「ロボコップ2」の映画内で、この旧MGC製のエアーソフトガンを発砲シーンのない場面でのプロップガンとして使用していた。
[編集] フェイザーガン
(映画・TVドラマ・スタートレック)
映画・TVドラマで有名なスタートレックに登場するクルーが使用する架空のエネルギー兵器である。数々の派生作品があるが、作品毎にデザインが違う。マニアであれば、このフェイザーガンのデザインを見ただけでどのスタートレックシリーズの作品か判別が可能といわれている。
他にフェイザーライフルなどの大型銃器も、メジャーではないが登場する。ちなみに、本作品で登場する「クリンゴン帝国」の兵士が使う銃は、フェイザーガンではなく、「ディスラプターガン」と言い、設定上フェイザーガンとは発射原理が違うことになっている
[編集] ブラスターガン
(映画・スターウォーズシリーズ)
映画スターウォーズに登場する各種架空のエネルギー兵器の総称。モーゼル拳銃や、スターリング短機関銃など実銃をベースに装飾した物が多く、米国などでもそれをモチーフにした子供用の玩具から、実際に撮影で使用されたような高級コレクター玩具まで数多く販売されており、ある意味世界で一番愛されているステージガンといえるかもしれない。
[編集] スーパーガン
(TVドラマ・ウルトラマン)
特撮作品「ウルトラマン」で使用される架空のエネルギー兵器。科学特捜隊なる組織の隊員標準装備の拳銃型光線銃である。ジグザクに発射されるエネルギー弾の格好の良さに当時の子供達は喜んだ。今でも本銃の玩具が製造されるなど、日本で幅広い人気を持つ小道具である。
[編集] ウルトラガン
(TVドラマ・ウルトラセブン)
特撮作品「ウルトラセブン」で使用される架空のエネルギー兵器。ウルトラ警備隊なる組織の隊員標準装備の拳銃型光線銃である。ウルトラマンの後続作品であり、かつ大人向けにも制作された作品ならではの当時としてはウルトラマンよりもリアルさに重点を置いて制作された小道具である。実際上記スーパーガン以上にこのウルトラガンに郷愁を抱く大人もいまだに多い。数万円もする高級玩具も製造されている。
[編集] ハカイダーショット
(TVドラマ・人造人間キカイダーシリーズ)
本作品におけるキカイダーの宿敵、アンチヒーローキャラであるハカイダーが使用する銃である。おそらく日本におけるこのような作品の「敵役」が使用する小道具としてのステージガンで、これ以上の個性のある有名なステージガンは他にないだろう。このハカイダーショットは、現在旧作と新作(雨宮慶太監督「人造人間ハカイダー」で使用されたもの)の2種類がある。旧作は、子供作品と言うこともあり、発砲機能のよくわからない縦2連銃身のリボルバーっぽい形態のデザインである。新作の方は、リアルさに重点を置いた、エアーソフトガンのショットガンをベースに装飾改造したものである。後者の方は商品化されていないようであるが、前者の旧作の方は昨今ガレージキットや高級玩具として商品化されており、極めて希少な高級玩具の方はプレミアが付き、専門店によっては31万円もの価格で販売されている。