ショックカノン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
ショックカノンは、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」シリーズに登場する、架空の兵器。
主に地球防衛軍・宇宙戦艦ヤマトを皮切りに、その後地球防衛軍戦闘艦艇の通常戦闘用艦載標準武装として、多く採用された。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
ガミラス戦役当初、地球防衛軍の有していたエネルギービーム兵器は、沖田艦の搭載していたフェザー砲に見られるように低出力で実用にはならず、その沖田をして「この艦（ふね）では、敵に勝てない……」と言わしめるほどに非力なものであった。
この事情は、イスカンダルよりもたらされた「波動エンジン」による、波動エネルギー機関の実用化によって一変する。地球人類がそれまで取り扱ったこともないほどの大エネルギー機関である波動エンジンは、あの強烈な「波動砲」以外にも、通常空間用兵器の格段の進歩をも促したのである。その表れは、まずは「ヤマト」に搭載された、強力な破壊力を誇る「主砲」であった。ヤマトはその起動直前、その存在を怪しんだガミラスの空母により攻撃を受けるが、ヤマトの主砲はこれを撃墜することができた。それも補助エンジンからのエネルギー供給のみで。その後には、発進を阻止せんがために打ち込まれた巨大ミサイルをも、その全砲門斉射で一撃のもとに粉砕した。それは、かつてのひ弱な地球防衛軍艦船の常識を覆すに充分なインパクトを見せた瞬間であった。
動作原理的には荷電粒子砲の一種で、そのエネルギー由来はプラズマ状荷電重粒子および、タキオン粒子エネルギーが一助となっているとも考えられる。例えばガミラス式のビームカノンが、どちらかといえば光線砲に近いような高純度高密度のエネルギー流の直接照射であるのに対し、波動エネルギー機関による莫大な動力を手にしたとは申せ、まだまだエネルギー制御技術に劣る地球防衛軍のそれは、暗黒星団帝国メルダーズの言葉を借りれば「石ころのような」粗雑なエネルギービームであったと言える。が、エネルギー飽和密度が低く、そして質量が大きく粒子の粗いエネルギーを、なかば無理矢理電磁加速して射出するシステム（非固形実体弾に近い）で、なおかつその砲門のモデルとなっているのは、砲身にライフルを切った旧式の実体弾兵器そのもの。この螺旋状のライフル構造を、まんま電磁加速レールの形状としたことにより、さながら弾丸のごとく螺旋を描いて突進する、あの独特のビームが形成されているのである。これは先に述べたエネルギービームとしての稚拙さを逆手に取り、進行方向向きの過大な運動エネルギーを与えた大質量のエネルギー流を、猛烈な衝撃と回転運動を伴って目標物にぶつけるという動作につながり、多少の対ビーム装甲などものともせず、インパクトドリルのような衝撃と回転エネルギーで敵の装甲をこじ開け内部に炸裂する。この動作が「ショックカノン」と呼ばれる名称の由来である。
ショックカノンはその動作原理上、必ず長い電磁加速装置を要するため、同じ口径・同じエネルギーの強さなら基本的には砲身の長さが長いほど強力なものとなる傾向がある。このため地球防衛軍の艦艇は、かつての大艦巨砲主義時代の再現の如き大口径・長砲身の大型火器が居並ぶ、見た目にも壮観なシルエットとなっているのが外観上の大きな特徴だ。また長い砲身からくる弾道の安定度・指向性の高さもあり、地球連邦軍艦艇は一般に「長距離精密射撃による砲撃戦」を得意分野とする。この辺りは『宇宙戦艦ヤマト2』によく現れており、斎藤始らを救出した第11番惑星上空会戦では、彗星帝国ナスカ艦隊の大戦艦とヤマトの一大砲撃戦が展開されたが、練度の差こそあれ、全く当たらないし当たっても距離減衰で既に威力の失せている大戦艦の近距離用ビーム砲に対し、10宇宙キロ余りも離れたヤマトの主砲は狙い違わず次々に着弾、しかも避弾経始効果が発揮されてしまう斜め急角度からの命中にも関わらず大戦艦の装甲を打ち抜き一撃で轟沈させる等、長距離砲戦に特化したエネルギー砲兵器の威力を見せ付けた。同じことが土星会戦時の戦艦メダルーザ対地球艦隊の折にも言え、火炎直撃砲を喪失したメダルーザは通常主砲で最後の反撃を試みるが、これも思うように命中しないばかりか、地球艦隊の正確な射撃を満身に浴びせられ轟沈という悲惨な結末に至った。
『ヤマトよ永遠に』における暗黒星団帝国との紛争直前になされた改装では、大きな改良が設けられている。同じ加速レール砲身から、波動エネルギー炸薬を仕込んだ実体弾兵器「波動カートリッジ弾」を射出できるようになり、本体そのものについても「エネルギーカートリッジ式」のものとなる。一発発射のたびに装填しているわけではないようで、どうやら斉射数発分のエネルギーを仕込んでいると考えられる。伝道管チャージに比べて効率は高く、より一層の攻撃力及び連射・速射性を得ている。『ガンダムシリーズ』でいうところのエネルギーCAP方式に似た形式といったところか。
