ギャンブルレーサー
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講談社の漫画雑誌・週刊モーニングに1988年(昭和63年)から隔週(一時期月3回掲載の時期もあり)で連載されていたが、後にイブニングに移動し、タイトルも『二輪乃書 ギャンブルレーサー』(にりんのしょ ギャンブルレーサー)と改められた。通算18年にも及ぶ長期連載の末、2006年1月に完結。
目次 |
[編集] 概要
競輪の世界を、競輪選手である関優勝(せき まさかつ)を主人公に描く人情ドラマ。
連載開始当初は、関優勝の私生活(ギャンブル漬け)を面白おかしく描いた構成で、競輪選手であることは半ば"オマケ"であった。事実、レース展開は余り重視した内容ではなく、時に走路審判員が打鐘しながら唾を吐くようなシーンも描かれた。だが、後に10巻あたりから、競輪のレース展開に比重を置いて、実際の車券作戦の参考にもなるような競輪の入門書的な構成となった。1巻から通して読めば分かるとおり、後年は台詞の文量が圧倒的に増えている。関優勝だけでは話に限界があるため、売二などの弟子が登場するようになり、元甲子園球児でドラフトを拒否して競輪選手になった息子の優一の活躍に比重が置かれるようになった。
時に大げさに「このレース売り上げゼロ」「本日入場者ナシ」などと競輪の存続の危機状態が描かれることがあり、特に2004年以降の連載においてその傾向が顕著になった。これは作者の田中誠がこの作品を通して行った2004年からの新規格の競輪界(特に施行者サイドに対して)に対する問題提起とも言える。競輪の将来を施行者の側からでなくファンの側から案じた“意見書”としての側面を見せていたギャンブルレーサーだったが、2005年のKEIRINグランプリでの関優一、金梨泡一の2着・3着をもって連載を終了した。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 主な登場人物
[編集] 関の家族
- 関 優勝(せき まさかつ)
- 主人公の競輪選手。37期という設定。ギャンブルをこよなく愛し、暇さえあれば麻雀、パチンコ、競艇、競馬などに繰り出して、大金をすってしまい、妻との諍いが絶えない。
- 実家は財産がかなりあったが、ロクデナシの父が競輪で財産のほとんどを食いつぶし、母も小学生のときに喪い、父が心臓発作で他界した時に残されていた財産は愛車のクラウンだけという有様だった。その為、競輪選手になって金を取り戻そうと決意し、中学卒業後、一浪して競輪学校に入学し(当時は中卒でも入学できた)、競輪選手となる。過去にGIレースで9回も決勝戦に進出するなど選手としての能力も一流だが、残念ながらGIタイトルは獲れなかった。実在の37期の競輪選手も誰一人としてGIタイトルを獲得していない(36期や38期にはいる)。ちなみに、同期の実在選手には竹内久人(岐阜)らがいる。
- 計算高く、関軍団が呆れるなかで色々な企みをするが、うまくいかないことが多い。現在も現役選手だが、年齢を重ねて脚力が衰え、稼ぎも昔ほどでなくなり、今では政治家への転身等の安直な逃げ道を夢見て零落の日々を送っている。口が悪いが、暴言に聞こえる彼の言葉は競輪をこよなく愛する作者をはじめとする競輪ファンの競輪業界への思いを代弁させたものとも思われる。
- 東京都東大和市に居を構える。ホームバンクは西武園競輪場で、実際の西武園競輪場でも「関優勝牌」なる競走(後述)が行われていた。
- 関 鐘子(せき かねこ)
- 関優勝の妻。旧姓井上。夫とは正反対の常識人。父・利明の借金のカタに大学時代から付きまとっていた関と泣く泣く結婚させられる。ロクデナシの夫と口喧嘩ばかりし、夫婦仲は悪く、一度は離婚を決意したこともある。関軍団の面々からは夫がいじめ続ける弟子を暖かく支えてきた女傑として慕われている。二児の母で、普通の専業主婦。
- 関 優一(せき ゆういち)
- 関優勝の長男。「優勝戦一着」から取った。通称・優坊。顔は母親似?
- 高校時代は投手として享帝大多摩川高校で夏の甲子園に2度出場。1年生の夏は開会式直後の第1試合で9回までノーヒットノーランながら打線の援護を得られず、延長戦で負けを喫する。2年生の夏は準決勝まで進出。3年生時も甲子園出場の有力候補だったが、地区予選1回戦で起きた「手抜き事件」をきっかけにマスコミにハメられ、以後の予選出場を辞退。その豪腕ぶりからドラフト会議では1位指名が確実視されていた。本人、父共に当初から競輪選手志望であったが、父の邪悪な誘惑に乗せられて、そのことを明言せずに各球団のスカウトから料亭や風俗等の接待を受けまくる。のちに優一の良心が咎めたため、ドラフト会議直前に競輪学校への入校を明言し、ドラフト指名拒否の姿勢を公表した。
- 現在は競輪選手となり、中野浩一のような傑出した脚力を活かして関軍団をはじめとする関東地域の強力な機関車(逃げ・捲り主体の先行選手)としてGIレース決勝戦にも勝ち残るなど大活躍。2005年、第48回オールスター競輪(売とのワンツー)、第21回全日本選抜競輪を連覇、父でさえ成し得なかったビッグタイトルを獲得する。同年の競輪グランプリでは後閑信一に差され惜しくも2着。余談だが、漫画の中で後閑は「今度こそ優勝だろ」と言っている(実際に後閑はグランプリ05で2着ながら勝利を確信し手を挙げてしまった)。
- 関 優宝(せき ゆうほう)
- 関優勝の次男。「優勝して競輪国宝になる」と思いついて取った。顔も性格も父親似の悪ガキ。
[編集] 関軍団
関の元に最初に弟子入りしてきた金尾はモノにならなかったが、その後に入れた売以後、続々と彼の元に有力な選手が弟子入りし、現在は大場と関がA級で他がS級と、一大軍団となっている。
- 常荷 金作(つねに きんさく)
- 元々は売の家庭教師に雇われた大学生。実家が常に借金取りから追われていたせいで自転車での逃げ足は速く、付き添いで売と最後の挑戦となる金尾と共に競輪学校を受験したら見事合格。藩屏を欲しがった関に説得されて、大学を中退して競輪選手になる。デビューから暫く9着(最下位)続きなど競輪選手としてはやや出世が遅れたが、現在は立派にS級選手として活躍中。一時期競輪界の将来を案じ、売とともに引退を考えるが撤回した。郁子夫人との間に長女良子(よいこ)がいる。関軍団の兄貴的存在。
- 売 二(うり ふたつ)
- 通称:ウリ。武蔵村山市在住の売良郎の次男(一(ひとつ)から五(いつつ)までの五人兄弟)。自転車での逃げ足が異常に速かったことに目をつけた関に870円で売られる。当初はアワを吹いてばかりで自分の名前すら書けず、人形か赤ん坊相手にしか喋れないバカだったが、金作の詰め込み教育のおかげで、何とか大検を合格して競輪学校への入学資格を得る。競輪選手としてデビュー直後は観客から「ウリジ」と読み間違えられながらも、持ち前の先行力で競輪祭で新人王のタイトルを得るなど一線級の選手として活躍。関軍団の中で最初にGIレースで表彰台に登る。最近は優一や泡一の強さを目の当たりにして脚力の衰えを自覚し、マーク屋に転身する。伸子夫人との間に長女ちさこがいる(名前の由来は、売が出生届に「さちこ」を「ちさこ」と書き間違えた為)。2005年のオールスター競輪では、優一に続き決勝戦2着と力強さが復活した。
- 大場 嘉太郎(おおば よしたろう)
- 通称:大バカまたはカ太郎。高校卒業後の進路を決めかねている時に売の優勝に感激して、同級生と3人で関の元に弟子入りを志願した。苦難の末、三バカトリオのうち唯一競輪学校に合格し競輪選手となる。プロ入り後は先行主体で戦っていたが、心の師と思っている吉田のとっつあんの適当な助言でマーク屋に転身。あまり向上心はなく、A級上位あたりを行ったり来たりしており、そこそこ稼げている現状に満足している。
- なお選手になれなかった門前清一(もんぜん せいいち、通称:チンイチ)と古山将治(ふるやま しょうじ、通称:タヌキ)は長い間無職だったが、山中で採ったカブトムシやクワガタムシが売れて大金を掴み、昆虫養殖の事業を始めた。
- 桐山 公男(きりやま きみお)
- 通称:武蔵。東大へ多数合格者を輩出している名門・武蔵開成高等学校出身。高三の初夏のときに街道で練習中の関軍団と遭遇し、弟子入りを志願。稼げる弟子を欲しがった関の承諾を受け、進学をやめて競輪選手になる。競輪選手としての能力も高く、過去に共同通信社杯競輪を制するなどの実績を挙げている。一時期やる気が無くなったが、2005年の競輪祭で決勝戦まで進み復活をアピール。
- 金梨 泡一(かねなし ほういち)
- 優一の中学時代の野球部の先輩。高校で優一のチームに都大会の準決勝で敗れ、スポーツ推薦での大学進学の道が断たれ、人一倍の金への執着心の強さから、金儲けのために競輪の道を志し関に弟子入りした。
- 本来新人は先行を主体とする競走をするのが「競輪道」であるが、競輪学校卒業後、泡一は他人に機関車として使われるのはまっぴらごめんと「追い込み」に転向してしまう。そのことがきっかけで関との師弟関係は破綻しているが、追い込みに転向したのは優一の機関車としての能力に賭けたためもあり、関軍団からは離れられない。若き日の井上茂徳のような競走を行なうのが特徴。直近の成績は2005年の競輪祭を優勝し競輪王のタイトルを獲得。同年の競輪グランプリでは優一の3着。
[編集] その他の主な人物
- 金尾 水造(かねお すいぞう)
- 関が最初にとった弟子。「楽をして金を稼げる」と思い関に弟子入りして競輪選手を目指すが、何年も受験に失敗し、関にいびられ続け、結局年齢制限をオーバーしてしまい、断念。それまでに鍛えた脚力を活かすべく、ベロタクシー運転手に転身した。観客として関軍団が活躍するのを注目している。収入は安定しているようである。
- 吉田のとっつぁん(よしだ)
- 関のギャンブル仲間。若い時分にパチンコ屋アリジゴクで出会い、意気投合するが、八百長を強要されるのを嫌がった関に競輪選手の関とは同姓同名の別人だと騙されている。植木職人だったが、ギャンブル狂でろくに仕事もせず、妻にも逃げられ、優一の記念初優勝の賞金をかっぱらう等のキング オブ ロクデナシに成り果てていた。置き引きや空き巣等で何度も刑務所に入る典型的な人生の落伍者だったが、出所後に競輪場に行く客に嫌みを言い続けていたのがきっかけで、絶対に当たる予言者として評判を呼び、大成功を収める。最終回で久々に登場し、スピリチュアル宣誓術師・細原数之(細木数子と江原啓之からとったネーミング)としての成金振りを関に披露した。但し、モーニング2006年31号から35号に掲載された『実録!関東昭和軍』の欄外コメントに関が登場し、「吉田が再び刑務所行きになった」と述べている。
[編集] 実在の競輪選手
この漫画では、競輪の世界をそのまま再現するために、実在の競輪選手がそのまま登場することでも知られていた。特に、関が若い頃は関東・東京でそれなりの有力選手であったという設定になっていたため、関の活躍していた頃とほぼ時代を同じくするフラワーラインの選手がよく登場していた。
[編集] 備考
競輪を題材にした漫画は他にも幾つかあるが、長期で連載が続いたのは本作以外に
- 『ケイリン野郎~周と和美のラブストーリー』(くさか里樹)
- 『打鐘(ジャン)』(山本康人)
程度であり、どうしてもマイナーになりがちな競輪を題材とすることがいかに難しいかが分かる。
関優勝を筆頭とする関軍団が西武園競輪場をホームバンク(普段の練習場)としていることから、西武園競輪場で開催される開設記念競輪(GIII)には一時「ギャンブルレーサー関優勝牌」との呼称が付けられていた(2006年現在は付けられていない)。
[編集] ゲーム
1996年、パソコン用ソフトとして『ギャンブルレーサー』が発売される。プレイヤー自身が関優勝となるもよし、弟子の常荷金作などとなってレベルアップするもよし、そこから特別競輪(現在のGI)タイトル獲得を目指して精進するシミュレーションゲームであった。当時活躍していた実名選手も多数登場している。
ほぼ同時期に出ていた、スーパーファミコン用ソフト「スーパー競輪」と比べれば内容は良く出来ていた方だったが、パソコン自体がまだそれほど普及していなかった時期であったため、ヒットしなかったのが惜しまれる。