カルメン故郷に帰る
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『カルメン故郷に帰る』（かるめんこきょうにかえる）は1951年の松竹大船撮影所製作の日本映画。日本初のカラー映画として有名。都会でストリッパーをやっているヒロインを演じる高峰秀子の爽やかな演技が光る。戦後の自由で少し軽薄な風潮に対する風刺喜劇として楽しく見れる作品である。
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[編集] あらすじ
子供のころに山の木の下で牛に蹴られて軽い知的障害を持った娘は東京へ出て、「リリイ・カルメン」という名前でストリッパーになっている。彼女が、同僚の踊子「マヤ朱美」と故郷の信州の田舎町に帰ってくる。村の男たちはうわべで彼女をおだてて、ストリップ興行を行うが、彼女の親や学校の先生は恥かしいやら悲しいやらで・・・
[編集] キャスト
[編集] スタッフ
[編集] 「日本初のカラー映画」
太平洋戦争終結後、アメリカやソ連から輸入されたカラー映画に刺激され、日本でも本格的なカラー映画を製作しようとする機運が高まっていた。松竹ではトーキーに続く「日本初」を目指し、富士フイルムと協力してカラー映画を製作することに決めた。
しかし、国産のカラー映画は技術やコストの面で問題が山積しており、松竹と富士写真フイルムは、「カルメン故郷に帰る」が『日本のカラー映画』として耐えうる作品ではないと判断された場合は、カラー撮影そのものをなかったことにしてカラーフィルムを破棄、従前のモノクロ映画として封切られることも内約してあった。そのため、カラー用撮影とモノクロ用撮影を同時進行させることにした。
フィルムは現行の内式（フィルム自体に発色剤が含まれている）ネガポジ方式とは異なり、撮影フィルム自体が正像を持つ反転式リバーサル方式で、発色も現像液に発色剤を添加させる「外式」で、欧米で主流だったテクニカラー（三色分解して白黒フィルムに露光し、印刷の要領で上映用プリントに着色）などに比べると、あらゆる面で大きく異なっていた。（16ミリ用に存在した「コダカラー」も外式リバーサル）
なお、この時点で、イーストマンカラーによる劇場用カラー映画は、まだハリウッドにおいても短編が試作される段階であった。
リバーサル方式そして外式発色方式は退色に対して堅牢である（松竹撮影所でのかなり劣悪な保存でも、フィルムベースはかなり劣化していたが、褐色・退色は補正出来る範囲であった）が、ネガポジ式ではないため、上映用プリントを大量に焼き付ける事に問題があった。
撮影には富士側のスタッフ立会いの下、断続的に試写用プリントを確認しながら進められた。明るさが必要なためほぼ全編ロケーション撮影となった（当初は上高地を予定していたが、技術的な問題の発生による時間的なロスもあり、北軽井沢に変更となった）。
また、俳優陣もモノクロとは違うメイクなどを施さなければならなかった。笠智衆は、どんなメイクを施してもおかしな発色になるのでスタッフ一同も首を傾げるほどであった。撮影と同時に、後に続くであろうカラー映画のために詳細なデータも蓄積していった。製作結果は赤・緑の発色に問題があった（赤の発色が強く、緑が勝るシーンでは、草などが枯れ草っぽく見えるetc）など不満足なものではあったが、映画評ではまずまず好評であり、興行成績は6800万円（当時）を記録した。
しかしながら、富士の方式では依然問題が多く、後にカンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した『地獄門』（大映作品）では、ネガポジ式で発色剤を現像時に添加する外式発色イーストマンカラー方式によるカラー撮影となった。
この作品は、松竹に「日本初の総天然色カ映画」の先を越された大映が、アメリカ・イーストマン・コダック社に碧川道夫などの技術陣を送り込み、「ハリウッドでテストするよりも日本でテストした方がリスクが少ない」と説き伏せて、イーストマン・カラーネガの試験的使用権を獲得した。イーストマンカラーとしてもこの「地獄門」が、世界初の長篇劇場用映画となった。
この作品の現像は当初ハリウッドに未現像ネガを空輸して現像する予定だったが、事故を怖れた永田正一が東洋現像所を説き伏せて同京都現像所にカラー現像設備を整えさせた。結果として世界初のイーストマンカラー方式での長編劇映画は色彩的に大成功を収め、アカデミー・技術賞も授賞した。
富士がイーストマンカラー方式に追従したのは、1954年のことであった。
なお、「カルメン故郷に帰る」の、同時に撮られたモノクロ版は後に破棄されたものと思われていたが、木下の遺品の中からオリジナルのモノクロ版が発見された。松竹ホームビデオから発売の「木下恵介DVD-BOX」の特典として見ることが出来る。
また、リバイバル上映の際に、リバーサルのオリジナル原版から作られた三色分解白黒ネガ（富士写真フイルムが研究用に作成・保存）からテクニカラー式にカラープリントを作成しようとしたが、費用の面で折りあわず、オリジナル原版からカラー・インターネガを起こしてプリントを作成した。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 高峰秀子『わたしの渡世日記』
- 「カラー映画の夜明け」『昭和 二万日の全記録』P138～139、講談社、1989年
- 日本映画撮影監督協会「季刊映画撮影」
- 田中純一郎「日本映画発達史」
