アリル化合物
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アリル化合物（-かごうぶつ、allyl compound）とは、2-プロペニル (2-propenyl) 構造 -CH2CH=CH2 を持つ化合物の総称である。2-プロペニル基はアリル基 (allyl group) とも呼ばれ、IUPAC命名法では慣用名とされる。
命名法では、2-プロペニル骨格を持つ置換基にアリル基という呼称は使用できるが、さらに置換法命名で誘導した置換基名としては使用できない。すなわち、2-メチルアリル- というような命名法は禁則である（2-メチル-2-プロペニル- とすべきである）。また日本語表記した場合、芳香族基を示すアリール基 (aryl group) と似ているので注意が必要である。
「アリル」の語源はユリ科ネギ属の属名 Allium に由来する。ネギ属の植物には硫化アリルをはじめとする、アリル基を有する硫黄化合物が多く含まれている。
アリル化合物、特に1位に電子求引性や電子供与性の原子あるいは基を持つアリル化合物は反応性に富み、種々の反応や重合反応に利用される。
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[編集] アリル位
炭素二重結合に隣接する炭素の置換基の部位はアリル位よび、SN2' 反応での特徴的な反応部位であることを示す。あるいは立体化学においては、炭素二重結合の骨格は平面構造を採ることで、アリル位の置換基は立体配置に対して特徴的な影響を及ぼす（アリルストレイン等）。これら「アリル位」は置換部位に対する呼称であり、アリル化合物と命名できない化合物でも（例えば、シクロヘキセンの3または6位に対しても）適用されうる。
[編集] 主な化合物
[編集] アリルアルコール
アリルアルコール (allyl alcohol) は最も構造が簡単な不飽和アルコール。IUPAC命名法では、2-プロペン-1-オール (2-propen-1-ol) となる。化学式 C3H6O(CH2=CHCH2OH)、分子量 58.1、沸点 97 ℃、融点 −129 ℃、比重 0.854で常温では無色の液体。CAS登録番号は 107-18-6。
消防法では危険物第四類、アルコール類に分類される。毒劇法による毒物で、付着や吸引などによって、皮膚や粘膜に炎症を起こす。
[編集] アリルアミン
アリルアミン (allyl amine) は、2-プロペニル基を持つ一級アミン。分子式 C3H7C3H7N、分子量 57.09 の催涙性でアンモニア臭がする液体。IUPAC名は2-プロペン-1-アミン (2-propen-1-amine)。沸点 55–58 ℃、比重 0.760、引火点 −12 ℃の引火性物質。CAS登録番号は 107-11-9。
[編集] 臭化アリル
臭化アリル（しゅうか-、allyl bromide）は2-プロペニル基を持つ臭化物。分子式 C3H5Br、分子量 120.98。融点 −119 ℃、沸点 71.3 ℃、比重 1.398 の催涙性のある液体。CAS登録番号は 106-95-6。
アリルアルコールと臭化水素酸から製造する。
[編集] 塩化アリル
塩化アリル （えんか-、allyl chloride）は2-プロペニル基を持つ塩化物。分子式 C3H5Cl、分子量 76.53。融点 −134.5 ℃、沸点 44–45 ℃、比重 0.938 の催涙性のある液体。引火点 −31 ℃の引火性物質。CAS登録番号は 107-05-1。
アリルアルコールと濃塩酸から製造する。
[編集] アリルエーテル
アリルエーテル (allyl ether) は2つの2-プロペニル基を持つエーテル。分子式 C5H10O、分子量 98.14。沸点 94 ℃、比重 0.805 の催涙性のある液体。CAS登録番号は 557-40-4。
硫酸、塩化銅(I) 触媒存在下、アリルアルコールから合成する。
[編集] その他のアリル化合物
- 硫化アリル (allyl sulfide)
- タマネギを切るときに涙が出る原因
- アリシン (allicin)
- ニンニクなどのねぎ類に多く含まれ、分解されると、ジアリルジスルフィド (diallyl disulfide)となり、にんにくの強烈な匂いとなる。
- イソチオシアン酸アリル (allyl isothiocyanate)
- 芥子の配糖体シニグリンが加水分解されて発生する、からしの辛味・臭気成分。
