アポイントメント商法
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アポイントメント商法（－しょうほう）とは、勧誘電話などで相手を呼び出し、商材を売りつける商法である。
最初の勧誘は電話で行なわれる事が多い。「高額商品を進呈する対象になっているので取りに来て欲しい」「あなたは1万人の中から特別に選ばれたので来て欲しい」などと相手の自尊心や射幸心をくすぐるような言葉を使い、営業所や喫茶店、展示会場などに出向かせる。抽選や商品モニターに当選したという口実を使うケースは「当選商法」や「おめでとう商法」とも呼ばれる。ほとんどの場合、消費者は抽選やモニターに応募をしておらず、業者が一方的に当選したといっているだけである。数は少ないが、電話ではなく郵便や電子メールを使う例もある。
また、「ハリ」と呼ばれるチラシを玄関に張り付ける方法もある。中には宅配便業者を装った巧妙な手口も存在し、発見後電話をするとアポイントメント商法だったりする。業界内ではこの向こうから掛けさせる手法を「逆ＡＰＯ」「コールバック」などという。
営業所などでは、密室に近い状態でしつこく根負けするまで勧誘して、商材を高額（30～200万円程度）で売りつける。商材は宝石・絵画・CD/DVDソフト（英会話・百科事典など教養娯楽教材）などが多く、その価値評価が主観により大きく変わり得るものが選ばれる。また、その引渡しに特定の契約を結ぶ必要があることも多く、例えば宝石・アクセサリー類では「原石をプレゼントします。でも加工代は別途頂きます」といったようなものもある。（加工代金を「特別プレゼント価格」としていたとしても、その実態は原石の代金を差し引いても利益が出る割高な事例も報告されている。）
20～30歳程度の男性が勧誘の対象となることが多い。これは、20歳以上であるとクレジットを組む事ができること、親に契約取消権がないこと、社会人経験の浅い若者は契約に無知な者が多いこと、就職により自分で自由に使う事ができる金が大きくなっていることなどによる。また、女性にモテないタイプが騙されやすく、そのような男性を業者は「ベロベロ」と呼んで重点的に狙っている。
この商法の肝となるのは、とにかく客をおだて褒め称えて良い気分にさせる所にある。偶然のチャンスをモノにした幸運な人だと舞い上がらせるのである。舞い上がった人間は往々にして判断力が鈍って気が大きくなる傾向が有るため、これに乗じて（市価よりも高い値段で）物品を売りつけようというのが、この商法の手口である。イベント会場などに呼びつけて期間限定であることを理由に早期の契約（考える時間を与えない）を迫る展示会商法と連動させるなどの特徴を持つ業者も見られ、消費者に冷静な判断をさせないようにする事から、クーリングオフ制度適用範疇に上がっている。
販売業者側から見ると、この商法はいかに多くの若者に勧誘の電話をかけられるかがポイントになってくる。そのための名簿はアポイントメント商法業者の新入社員が市町村役場に出向き住民基本台帳を閲覧して個人情報を入手する方法や、名簿業者、資料ブローカーから入手する方法などがある（後者の方法が圧倒的に多い）。住民基本台帳閲覧申請時は許可を得やすくするのと身元をごまかすため、架空会社の社員証を用意するなど手が込んでいる。
他には、実家に非通知発信で電話し、「同級生の○○ですが、△△さんはいますか。至急連絡を取りたいので△△さんの携帯電話番号を教えてください」という手法が過去には多く存在した。
勧誘手段として2006年現在多いのは、アポイントメント＝契約というスタイルの会わずに契約を済ませる「電話クロージング」通称「デンクロ」と呼ばれる手法であり、それに併せた商材が多い。
この商法は特定商取引法上の訪問販売（訪問販売とは逆に、客の側から事務所に出向いている訳だが、同法の規定に依れば目的を隠しての勧誘は禁じられている）に該当することが多く、クーリングオフできるケースも多い。日本では国民生活センターや消費者センターへの相談が勧められる。
アポイントメント商法と似た商法として、異性の勧誘員が親しい交際を装って会い、高価な商品を購入させようとするデート商法がある。デート商法は自尊心ではなく恋愛感情を利用するのがアポイントメント商法と異なる点である。また、男性が対象になる事が圧倒的に多いアポイントメント商法と較べ、デート商法では男性も女性も対象となる。
他にも同商法を取り入れた悪徳商法は数多く見られる。一度ノコノコと呼び出された場合に、悪徳商法の顧客リスト（場合によってはこのリストが同業種間で売買されるケースもある）に記載され、幾つもの契約を多重的に結ばせる次々商法に遭う可能性も懸念される。
2006年現在では、オレオレ詐欺などの影響により、アポイントメント商法業界自体が信用を失うと共に大打撃を受け、真面目な商品を扱う業者も売り上げが減りかなりの数が倒産している。もっとも「真面目な商品」であったとしても、アポイントメント商法自体が批判を免れない行為であることは言うまでもない。
男性の被害者は、このような商法の被害に遭っても、「自業自得」であるとして周囲の者や、時には被害者の救済に当たる団体の職員から白眼視されることも多い（担当の職員が女性である場合に顕著である）。しかし悪質な商法の根絶のためには、一時の恥や屈辱に耐えても毅然とした態度で相談すべきである。
