それでも町は廻っている
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『それでも町は廻っている』（それでもまちはまわっている）は、石黒正数によるギャグ漫画作品。『ヤングキングアワーズ』（少年画報社）において2005年5月号から連載されている。
「―街は―」や「―回っている」、「―廻ってる」は誤植。
目次 |
[編集] 概要
通称『それ町』。一話完結形式。東京都内の下町・丸子で育った女子高生、嵐山歩鳥を主人公に、彼女の周りで起きる日常の出来事を中心に描いてゆく日常コメディー。連載当初は、ミステリー要素がストーリーに絡んで展開していたのだが、次第にただ淡々と日常が過ぎてゆく様を描く単なるご近所ものへとなっていった。
マスターがメイド喫茶を知らずに、「なんかチマタで流行っているらしい」といった理由だけで店をメイド喫茶にしてしまう設定は、メイド喫茶に何の思い入れなくメイド喫茶マンガを連載してしまう作者自身のメタファーである。
[編集] あらすじ
嵐山歩鳥は、丸子商店街の喫茶店「シーサイド」で、ウェイトレスのアルバイトをする普通の女子高校生。ある日、マスターの磯端ウキが、店を繁盛させる秘策を思いつく。それは、チマタで話題のメイド喫茶だった。しかし、ここで一つ問題にぶちあたる。関係者の誰もがメイド喫茶を知らなかったのだ。普通なら、実際にメイド喫茶に行って調査するところだが、とにかくウェイトレスがメイド服を着ればメイド喫茶だろう、といういい加減なノリで「シーサイド」はメイド喫茶として再スタートしたのであった。同級生でありウェイトレスの同僚である俊子、同じ学校の先輩双葉、歩鳥に思いを寄せる同級生広章など、歩鳥の周囲のゆるい日常は静かに流れていくのであった。
[編集] 主な登場人物
学年、年齢は単行本2巻現在のもの。
- 嵐山 歩鳥（あらしやま ほとり）
- 主人公。16歳。尾谷高校の2年生。天然ボケだが感情豊かで、下町育ちゆえか性格や言葉遣いは中性的。シーサイドのメイド1号。成績はそれなりだが数学は苦手。推理小説を読むのが好きで、夢は女子高生探偵らしいが、実際にそれなりの推理力を持っていることから、少なくとも「探偵」の部分に関しては冗談とは言い切れない。突発的にダジャレやアダ名を考えついては口にするが、その度にタツ子にツッコまれている。表紙に「事件簿」と書かれたネタ帳を常に所持し、日々の出来事や覚え書き・アイデア等を気の向くままに記入している。どうやら担任の森秋が気になっているようだが、自分自身はまだその感情の正体には気付いていない。また真田に好かれていることにはまったく気付いていない。
- 辰野 俊子（たつの としこ） ※作中での表記は辰野 トシ子
- 16歳。尾谷高校の2年生でシーサイドのメイド2号。真田のことが好きで、彼がシーサイドの常連であると知ってアルバイトを始めたが、接近する機会は増えたものの未だに想いを伝えられずにいる。シーサイド内で唯一、メイドカフェの知識を持っている。中学のときは卓球部所属で、双葉の後輩。裸眼ではほとんど何も見えないほど視力が低く、眼鏡を着用している。歩鳥に「タッツン」というアダ名を付けられた（ごくまれに「タッツンツン」と呼ばれることもある）が、本人は全く気に入っていない。歩鳥のボケやダジャレに対してすかさずツッコミを入れるが、気が短いのか本気で怒りながらツッコむこともある。名前の由来はタツノオトシゴ。
- 真田 広章（さなだ ひろゆき）
- 15歳。尾谷高校の2年生。魚屋の息子で、休日などには店の手伝いをしている。歩鳥とは幼馴染。歩鳥に対して恋心を抱いており、彼女がアルバイトをしているシーサイドに足しげく通っている。とはいえ、歩鳥と手をつなぐだけで真っ赤になるあたり、まだまだ恋愛は奥手のようだ。名前の由来は俳優の真田広之。
- 磯端 ウキ（いそはた ―）
- メイド喫茶シーサイドの店長兼マスター。歩鳥や常連客には「ばあちゃん」、トシ子には「メイド長」と呼ばれている。歩鳥が小さい頃から可愛がっており、泣きついてくる歩鳥にいつもカレーライスをご馳走してやっていた。メイドカフェが儲かると知ってシーサイドをメイド喫茶化したが、その際にそれまでのカレーライス代の代わりに歩鳥をアルバイトとして働かせることにした。口は悪いが面倒見はよい他、意外にも気が利く一面もある。一方、勇司たち常連に対しては、強引に注文を変更したりヒドい言葉を浴びせかけたりして楽しんでいる。
- 紺 双葉（こん ふたば）
- 尾谷高校の3年生。ボーイッシュな性格だが顔は良いらしく、初対面の歩鳥に「12、3歳のナマイキな美少年」と評された他、タツ子にも「黙って寝ていればかわいい」といわれた。中・高と卓球部所属で、中学時代はトシ子の先輩。アパート「河井荘」で一人暮らしをしている。女の一人暮らしのため、表札には父親の名を記している。音楽好きらしく、歩鳥いわく「お店が開けるほど」たくさんのCDを持っている。バンドに所属しているかどうかは不明だが、ベースを所有。からかい甲斐があるのか、部活の後輩でもないのによく歩鳥に絡んで遊んでいる。「コバン」という名の白い猫をペットとして飼っている。
- 針原 春江（はりばら はるえ）
- 尾谷高校の2年生。歩鳥やトシ子の友達で、卓球部に所属している。
- 森秋 夏彦（もりあき なつひこ）
- 尾谷高校の数学教師で、歩鳥やトシ子の担任。歩鳥からは「モリアーキー」というアダ名で呼ばれている。理論派で堅物、冗談が通じないタイプではあるが、時折ノリのよい一面を見せることもある。歩鳥の成績の悪さと天然っぷりに胃を痛めている。森秋が小学生の時、割り算での質問に対する担任の回答に文字通り割り切れない思いを抱き、それがきっかけとなり数学教師となった。また、そのエピソードによって、その先生は人生における一人目の天敵となった。なお、二人目の天敵は歩鳥であるが、この二人は言動のみならず顔まで似ているらしい。名前の由来は『シャーロック・ホームズ』のモリアーティー教授と作家の京極夏彦。
[編集] その他の登場人物
- 嵐山 猛（あらしやま たける）
- 歩鳥の弟。小学生。かなり利発な性格で、歩鳥には検察官に向いていると指摘されるほど（第16話）。真田が姉の歩鳥を好きだということに気付いているが黙っている。作中では「タケル」と表記される。
- 嵐山 雪子（あらしやま ゆきこ）
- 歩鳥の妹。小学生。まだまだやんちゃな遊び盛り。作中では「ユキコ」と表記される。
- 嵐山 歩（あらしやま あゆむ）
- 歩鳥の父。公務員。嵐山家のペット・ジョセフィーヌには、家族の中で唯一下の階級に見られている（第19話）。本編ではまだ顔を見せていない。
- 嵐山 文子（あらしやま ふみこ）
- 歩鳥の母。旧姓は「綾鳥」。専業主婦。夫の歩いわく、3人の子供は全員文子に似ているらしい。実際、Tシャツ選びのセンスや髪型などは歩鳥に似ている。本編ではまだ顔を見せていない。
- 真田 勇司（さなだ ゆうじ）
- 広章の父。魚屋を営む。スキンヘッドに口ひげという出で立ちで強面。八百屋の貴則、クリーニング屋の和豊と同級生で、自分が番長だと思っていた。貴則、和豊の三人で、よく「シーサイド」でサボっている。
- 菊池 貴則（きくち たかのり）
- 八百屋を営む。あごに髭を蓄えている。ラガーシャツを好んで着用し、がたいもよい。学生時代は、勇司同様自分は番長だと思っていたが、勇司もそう思っていたことを知り、町内会の慰安旅行の際、酔った勢いで勝負をするも引き分けとなる（第12話）。
- 荒井 和豊（あらい かずとよ）
- クリーニング屋。細い目、危うい頭頂部、肥満気味の体型が特徴。勇司たちには「コブ平」と呼ばれている。奥さんの名前は増代（あらい ますよ）。
- 松田 旬作（まつだ しゅんさく）
- 警察官で、階級は巡査。歩鳥とはことあるごとに衝突を繰り返している。真面目だが短気な性格で、歩鳥の態度にキレては「もう我慢ならねぇ!」と銃を抜こうとする。
[編集] 登場舞台
- メイド喫茶「シーサイド」
- もともとは磯端ウキの経営する普通の喫茶店で、店名は同じくシーサイド。「メイドカフェ」が流行っていると知り、メイド喫茶にしてみたものの、メイドカフェの本質を知らないため、制服がメイド服になっただけの喫茶店である。
- 名前の由来：マスターの名前（磯端）を英語に。
- 尾谷高等学校
- 歩鳥たちの通っている学校。
- 元ネタ：親孝行。
[編集] 小ネタ
原作者はパロディー世代の作家らしく、本作も自作品の引用や他作品のパロディー、オマージュが満載である。以下、直接的な引用と思われるネタを列挙する。
- 設定：「ペンション コメット」（単行本第2巻53ページ）
- 歩鳥が行った天国にあるペンション。単行本第2巻の帯にオススメのコメントを寄せている小原愼司作『菫画報』第2巻に登場。
- 台詞：「何もかもみな懐かしい感じ？」（第2巻88ページ）
- 歩鳥が退院し、出勤したときのタッツンの台詞。『宇宙戦艦ヤマト』の沖田十三艦長の台詞「地球か……なにもかも、みななつかしい」より。
- 人物：天使ヨハネ（単行本第2巻）
- 歩鳥曰く「やる気のない天使」。実は案内係のおじさんの息子である（63ページのおじさんの台詞「私の息子もやってますし」より）。髪型が同じ。
- 人物：一乗はるか（単行本第2巻125ページ）
- グラビアアイドル。広章が所有していたグラビア雑誌の表紙になっていた。原作者の前作「アガペ」の主人公。
[編集] サブタイトル
- 第1話「至福の店 ビフォア」
- 第2話「至福の店 アフター」
- 第3話「セクハラ裁判」
- 第4話「目」
- 第5話「愛の逃避行」
- 第6話「辰野トシ子は砕けない」
- 第7話「宇宙冒険ロマン」
- 第8話「看板娘は大人気」
- 第9話「恋の方程式」
- 第10話「カマボコ ボヨン ボヨン」
- 第11話「猫少年」
- 第12話「乙女の誘いは奈落の罠!?」
- 第13話「それでも町は廻っている（前編）」
- 第14話「それでも町は廻っている（後編）」
- 第15話「パジャマの天使」
- 第16話「ナイトウォーカー」
- 第17話「出張メイドサービス」
- 第18話「穴」
- 第19話「ジョセフィーヌの夏」
[編集] 単行本
- 第1巻（第11話までを収録） 2006年1月27日発行 ISBN 478592604X
- 第2巻（第12話から第19話までを収録）2006年12月１日発行 ISBN 4785927070
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- なお第2巻163ページに、第18話に登場する宇宙人が話す宇宙語の対応表が掲載されているが、「ブ」の濁点の位置が違っている。
